森畠 康策, 玉井 秀幸, 新垣 直樹, 森 良幸, 一瀬 雅夫

Kosaku MORIBATA, Hideyuki TAMAI, Naoki SHINGAKI, Yoshiyuki MORI, Masao ICHINOSE

和歌山県立医科大学第二内科

Second Department of Internal Medicine, Wakayama Medical University, Wakayama, Japan

キーワード :

【背景】
肝細胞癌の悪性度を評価することは，治療方針を決定する上で極めて重要である．悪性度の評価法の一つとして，以前より肝細胞癌の肉眼型との関連が報告されてきたが，近年再注目されてきている．単純結節型に比べ多結節癒合型や単純結節周囲増殖型のほうが，切除後の予後不良であり，悪性度が高いとされる．しかし，肉眼型を正確に評価できる画像診断法は未だ確立されていない．
【目的】
ソナゾイド造影超音波を用いて肝細胞癌の肉眼型を正確に診断できるか検討した．
【対象と方法】
2008年1月から2010年5月まで術前にソナゾイド造影超音波を施行した5cm以下の肝細胞癌42結節を対象とした．後血管相（クッパー相）の形態より肉眼型を診断した．また，浸潤のない単純結節型（single nodular；SN型）を低悪性度群，単純結節周囲増殖型（single nodular type with extranodular growth；SNEG型），多結節癒合型（contiguous multinodular；CMN型），単純結節型で浸潤性発育，被膜や漿膜，脈管への浸潤を伴うものを高悪性度群，と分類し，Bモードおよび造影欠損像の輪郭の性状により悪性度判定が可能か検討した．
【結果】
平均腫瘍径は30.4±11.2mm，SN型40％，SNEG型26％，CMN型33％であった．造影超音波の肉眼型全体の正診率57％であり，肉眼型別ではSN型，SNEG型，CMN型でそれぞれ，82％，0％，71％であった．Bモードおよび造影での悪性度の正診率は57％，55％で，高悪性度の感度はそれぞれ，47％，53％，特異度は88％，75％，PPVは94％，90％，NPVは28％，27％であった．
【結論】
ソナゾイド造影超音波を用いた肉眼型の正診率は決して高くはなかった．しかし，Bモードおよび造影欠損像の輪郭所見は特異度が高く，悪性度診断に有用であった．