Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:肝腫瘍1

(S375)

造影超音波を用いた肝細胞癌の腫瘍分化度診断の検討

Examination of HCC differentiation by using contrast enhance US

渡邊 幸信1, 小川 眞広1, 塩澤 克彦1, 阿部 真久1, 中河原 浩史1, 山本 敏樹1, 森山 光彦1, 高山 忠利2, 杉谷 雅彦3, 石田 秀明4

Yukinobu WATANABE1, Masahiro OGAWA1, Katuhiko SIOZAWA1, Masahisa ABE1, Hiroshi NAKAGAWARA1, Toshiki YAMAMOTO1, Mituhiko MORIYAMA1, Tadatoshi TAKAYAMA2, Masahiko SUGITANI3, Hideaki ISHIDA4

1駿河台日本大学病院消化器肝臓内科, 2日本大学医学部附属板橋病院消化器外科, 3日本大学医学部附属板橋病院病理学教室, 4秋田赤十字病院超音波センター

1Gastroenterology and hepatology, Surugdai Nihon university school of medicine, 2Department of Surgery, Nihon university Itabashi school of medicine, 3Department of Pathology, Nihon university Itabashi school of medicine, 4Center of Diagnotic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【目的】
肝細胞癌(以下HCC)の分化度診断は各種画像診断で行なわれているが,肝細胞癌自体が均一な分化度で構成されているわけではないために有効な基準がないのが現状である.腫瘍分化度診断波は,治療や予後に関わる重大な因子であるが,組織診断を行わない限り確定診断には至らずこれが臨床上の問題点となっている.今回我々は,造影超音波検査を用いた血管構築と切除標本によるHCCの分化度について検討を行ったので報告する.
【方法】
対象は,当院にて2007〜2010年にSonazoidを用いた造影超音波検査を施行したHCC切除症例40結節とした.使用装置はGEヘルスケア社製LOGIQE9,使用探触子はC1-5,9L,造影超音波検査時のHCCの血管構築を「腫瘍濃染の程度」,「腫瘍血管の走行」,「周囲正常肝組織の変化」の3つに分類し,それぞれ術後の組織所見との比較を行った.「腫瘍濃染の程度」,「腫瘍内血管の走行」はvascular phase,「周囲組織との濃染程度の差」についてはportal phaseで比較検討を行なった.また血管構築については加算画像を用いて評価を行なった.
【結果】
高分化型HCCでも腫瘍濃染は認めるが中分化HCCと比較すると濃染程度は弱かった.中分化型,未分化型HCCでは濃染像が強くなるが未分化型HCCでは一部に欠損像を呈する症例を認めた.「腫瘍内血管の走行」では,高分化型HCCでは認めず中分化型HCC,未分化型HCCで認め,分化度が悪いほど腫瘍内血管は多く屈曲蛇行も強い傾向が見られ,未分化型HCCでは腫瘍血管の不整・断裂増も認めた.「周囲正常肝組織の変化」においては,被膜形成のはっきりとした腫瘍において腫瘍濃染像の持続時間が長い傾向を認めたが被膜の存在以外にも腫瘍が膨張性発育呈し脈管浸潤がない症例においてはhyper echoic ringが腫瘍濃染像の後に残存しているのが特徴であった.
【まとめ】
Sonazoidを用いた造影超音波検査は,高フレームレートによる詳細な血流変化が観察可能であり,その特徴からある程度の組織学的な腫瘍分化度が推測できることが示唆された.特に濃染像のみではなく腫瘍血管の多寡と走行の変化が中分化型HCC,未分化型HCCにおいて特徴的な所見を認めその分化度の含む割合に応じてその所見も出現していることが確認された.また濃染持続や周囲の濃染程度の差が腫瘍の形態診断や脈管浸潤に関与しておりこれらの所見も含めて評価を行なうことが腫瘍の組織診断を推測する上では重要であることが推測された.今回切除症例であることより中分化型HCCの症例が多かったが今後さらなる症例の積み重ねによりさらなる検討を行なう必要があると考えられた.
【結語】
病理組織所見と造影超音波検査の比較において各分化度における特徴があることが確認され分化度診断には有用であることが確認された.