安井 豊, 土谷 薫, 細川 貴範, 上田 研, 葛谷 貞二, 中西 裕之, 板倉 潤, 黒崎 雅之, 朝比奈 靖浩, 泉 並木

Yutaka YASUI, Kaoru TSUCHIYA, Takanori HOSOKAWA, Ken UEDA, Teiji KUZUYA, Hiroyuki NAKANISHI, Jun ITAKURA, Masayuki KUROSAKI, Yasuhiro ASAHINA, Namiki IZUMI

武蔵野赤十字病院消化器科

Department of Gastroenterology and Hepatology, Musashino Red Cross Hospital

キーワード :

【目的】
Gd-EOB-DTPA造影MRI（EOB-MRI）肝細胞相で検出され，造影CT（MDCT）動脈優位相で濃染を示さない肝腫瘍性病変についての明確な診断・治療基準治は確立されていない．今回我々はSonazoid造影超音波（CEUS）所見およびEOB-MRI所見と病理組織所見を比較し，腫瘍分化度・生物学的悪性度と画像所見との関連および治療要求度について検討した．
【方法】
2008年3月から2010年9月に当院にてEOB-MRI・MDCT・CEUSを同時期に施行し，組織診断がなされた110例118結節のうちEOB-MRI肝細胞相低信号・MDCT動脈優位相で濃染を示さない結節を対象とし，総合画像所見と組織診断での分化度を比較した．CEUSは東芝メディカルシステム社製Aplio XGを用い，Sonazoid 0.5ml/bodyをbolus投与後vascular pahseとして90秒観察し，投与後10分後からKupffer （post vascular） phaseとして20分まで観察した．Kupffer phaseは20分まではMI値 0.2-0.3で観察し，その後hypoechoic lesionとならない結節についてはMI値1.5前後の高音圧パルスドプラモード（ADF ; advanced dynamic flow）で観察した．
【結果】
EOB-MRI肝細胞相で低信号となる104結節は，多血性56結節，非多血性48結節であり，非多血性48結節のうちHCCは39結節（81%）であった．非多血性結節はCEUS vascular phaseでhypervascular 16結節，isovascular 18結節，hypovascular 7結節であった．この中でCEUS Kupffer相低エコーとなるHCC 28結節は，高分化型HCC 18結節，中分化型HCC 9結節，低分化型HCC 1結節と低中分化型の頻度が高く，Kupffer相低エコー結節はHCC以外に胆管細胞癌 2結節が含まれた．CEUS Kupffer相等エコーとなる12 結節は，高分化型HCC 10結節，中分化型HCC 2結節であり，中分化型HCCはいずれも30mm大と大型であった．20mm未満の25結節中，高分化型HCC 17結節ではCEUS Kupffer相低エコーが11結節であったのに対し，中低分化型HCC 6結節は全てCEUS Kupffer相で低エコーであり，小型の結節でKupffer相低エコーの場合悪性度が高い可能性が示唆された．また，MRI T1 in phase - out of phaseの信号差は脂肪成分の含有を示唆するが，この所見が見られた25結節のうちCEUS Kupffer相等エコーとなった9結節は全て高分化型HCCであった．
【結論】
肝腫瘍の悪性度評価・血流評価にはCEUSが有効であり，MDCT非多血性であってもEOB-MRI肝細胞相で低信号を呈し，かつCEUS Kupffer相で低エコーを示す結節は治療必要度が高い．また，CEUS等エコーとなる場合でも，MRI T1 in phase-out of phaseの信号差を認める結節は高分化型肝細胞癌の可能性が高い．