Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
血管:動脈硬化2

(S369)

高血圧群と正常群の血流自己調節能の違い-ウェーヴ・インテンシティーによる解析

Differences in autoregulation of carotid arterial blood flow between normal and hypertensive subjects - Analysis using wave intensity

田中 みどり1, 菅原 基晃1, 仁木 清美2, 泉 唯史1, 小寺 宏尚1, 岡田 孝3, 原田 烈光3

Midori TANAKA1, Motoaki SUGAWARA1, Kiyomi NIKI2, Tadafumi IZUMI1, Hironao KODERA1, Takashi OKADA3, Akimitsu HARADA3

1姫路獨協大学医療保健学部, 2東京都市大学生体医工学科, 3アロカ株式会社研究所

1Faculty of Health Care, Himeji Dkkyo University, 2Biomedical Engineering Department, Tokyo City University, 3Research Laboratory, Aloka Co.Ltd

キーワード :

【背景と目的】
生体の組織は,血流を必要十分な量に保つ内因性の能力(自己調節能)を持つ.血流の調節は,末梢抵抗を変化させて行われる.末梢抵抗の変化は,脈波の反射波の強さを変化させる.したがって,反射波の強さは,自己調節能の強さを表す.反射波の強さは,ウェーヴ・インテンシティー波形の負の部分の面積(NA)で評価できる.本研究では,総頸動脈のNAを,高血圧症例と健常例で測定し,両群の頭頚部血流の自己調節能の違いを検討する.
【対象と方法】
年齢を整合した高血圧症例(最高血圧135 mmHg以上,または最低血圧85 mmHg以上)100例(HT群:63.4±8.3歳),健常例95例(Norm群:61.7±10.8歳)を対象とした.室温25度Cの部屋で,仰臥位安静10分後, 上腕にて血圧を測定,同時に超音波診断装置(Aloka社製;α10)にて左総頸動脈の頸動脈洞より2cm近位部のウェーヴ・インテンシティー を測定し, NAを得た.
【結果】
HT群,Norm群ともにNAは年齢に依存しなかった.NAの値は,HT群で有意に大きかった(P < 0.0001)(図上).HT群,Norm群ともにNAは,頸動脈血流速度の最大値(Umax)に依存した(HT: r = 0.62,P < 0.0001; Norm: r = 0.35,P < 0.0005).Umax上のNAの回帰直線の傾きは,HT群で有意に大きかった(P < 0.0005)(図下).
【考察】
大動脈血圧は,前進波に身体下部からの反射波が重畳して上昇する.身体下部からの反射波は,HT群ではNorm群よりも強いことが知られている.総頸動脈でみる頭頚部からの反射波は,大動脈血圧の上昇にはほとんど寄与しない.したがって,HT群では頭頚部からの反射波が強いという予測は成り立たないし,実測データもなかった.今回,HT群では,頭頚部からの反射波も強く,しかも血流速度に対する依存性が極めて強いことが明らかとなった.
【結論】
HT群は,頭頚部血流の自己調節能が極めて高い(鋭敏過ぎる)群であることが明らかとなった.