Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
血管:静脈

(S369)

当院における術前肺塞栓症例における超音波診断とその対策について

Management of preoperative pulmonary embolism and assessment of diagnosis by ultrasonography.

保田 知生1, 梅本 雅彦2, 赤木 将男3, 谷口 貢4, 柳生 行伸5, 石丸 英三郎1, 椎名 昌美6, 平野 豊4, 辻 裕美子7, 後藤 千鶴7

Chikao YASUDA1, Masahiko UMEMOTO2, Masao AKAGI3, Mitsugu TANIGUCHI4, Yukinobu YAGYU5, Eizaburou ISHIMARU1, Masami SHINA6, Yutaka HIRANO4, Yumiko TSUJI7, Chizuru GOTOH7

1近畿大学医学部外科, 2近畿大学医学部産婦人科, 3近畿大学医学部整形外科, 4近畿大学医学部循環器内科, 5近畿大学医学部放射線科, 6近畿大学医学部堺病院産婦人科, 7近畿大学医学部附属病院循環機能検査室

1The Department of Surgery, Kinki University Faculty of Medicine, 2The Department of Gynecology and Obstetrics, Kinki University Faculty of Medicine, 3The Department of Orthopedics, Kinki University Faculty of Medicine, 4The Department of Cardiology, Kinki University Faculty of Medicine, 5The Department of Radiology, Kinki University Faculty of Medicine, 6The Department of Gynecology and Obstetrics, Sakai Hosipital Kinki University Faculty of Medicine, 7The Laboratory of Cardiovascular function, Kinki University Hospital

キーワード :

【はじめに】
静脈血栓症の最高リスク患者は基礎疾患(癌,炎症,血栓症既往など)に付随して凝固亢進状態を呈することが多く,予防を行わず手術すると高率に肺塞栓症(PTE)を発症する.ガイドラインには無予防の場合4から10%の確率で症候性肺塞栓症を発症すると記載されている.当院ではハイリスク症例に対し,術前Dダイマーによる血栓症スクリーニングと異常例の画像診断検査を行い,2004年から毎年2から4例の術直前に肺塞栓症を診断し,対応してきた.
【方法】
2002年10月1日から2009年9月30日の期間内に手術を予定し,術前肺塞栓症(prePTE)と診断された症例を対象とし集計した.PTE既往症例は除外した.血栓予防対策は術前後の抗凝固療法の使用を基本とし弾性ストッキングを併用したが,全例で間欠的空気圧迫法は使用しなかった.術前に画像診断検査として下肢静脈エコー,造影CT検査,心臓超音波検査を行い術前にリスク評価を行い,延期の可能な症例は延期し,困難な症例は術前抗凝固療法を全例に行い,下大静脈フィルターの必要な症例については挿入後に手術を行った.フィルター留置は複数の血栓対策委員の合議により挿入を決定し,術前後に抗凝固療法の可能な症例については浮遊血栓症例と既に肺塞栓症を発症しておりさらなる血栓の遊離飛散が重症化を回避できない際に留置することにした.
【結果】
期間内の新規の術前肺塞栓症は合計16例(症候性3例,内1例は準広汎性)であり血栓対策委員会の管理下に予防対策と治療が行われた.術前予防は未分画ヘパリン13例,ワーファリン3例,術後は未分画ヘパリン14例,Xa阻害薬2例が全例に使用された.診療科別では外科4例,産婦人科11例,整形外科1例であった.下大静脈フィルターは術前肺塞栓症の4例に留置した.術前Dダイマーは4.5±3.8μg/mlであり,中リスク3例,高リスク4例,最高リスク9例であった.平均年齢63.8(37-86)歳,平均BMIは24.4±3.9であった.下大静脈フィルターは全例一次留置型であり,留置期間は平均8.4±4.4日であった.術前UCGでは左室圧像は1例のみであり,平均右室圧は42.8mmHg(31-81),平均IVC径は14.7±4.9mmであった.下肢USでは症候性DVTは6例であった.近位(遠位合併8例を含む)11例,遠位4例,DVT未検出1例であった.DVT部位は右側のみ1例,左側のみ6例,両側8例であった.浮遊血栓は7例,非浮遊は8例であった.ヒラメ静脈にDVTを検出した症例は8例で,ヒラメ静脈のみにDVTを検出した症例は1例であった.
【まとめ】
術前肺塞栓症の場合一定期間の術前抗凝固療法あるいは手術の延期を考慮した凝固亢進状態のコントロールが必要である.これらの症例では管理不能となる増悪には遭遇していない.最高リスク症例は抗凝固薬による予防を主に行わなければ,致死性肺塞栓症を減少させることは困難である.超音波診断は造影CTとあわせ今後の病態の予測と対応策の決定に必要不可欠の検査と考えられた.