Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
血管:動脈硬化2

(S368)

頸部血管内の血流境界面に見られる膜様エコー

Evaluation of stream boundary flap-like echo in cervical vessels

工藤 陽子1, 椿森 省二1, 辻本 欽英1, 前田 翔子1, 今北 哲2, 有澤 淳2

Yoko KUDO1, Shoji TSUBAKIMORI1, Yoshihide TSUJIMOTO1, Shoko MAEDA1, Satoshi IMAKITA2, Jun ARISAWA2

1ハイメディッククリニックWEST臨床検査課, 2ハイメディッククリニックWEST画像診断センター

1Clinical Laboratory, Himedic Clinic WEST, 2Diagnostic Imaging Center, Himedic Clinic WEST

キーワード :

【はじめに】
頸部血管エコー検査時に,頸動脈球部やプラークの末梢側にヒラヒラとはためくように動く糸状あるいは薄膜状のエコーが観察されることがある.従来これらのエコー源としては「析出したフィブリン」や「はがれた血管の内膜」などが考えられてきたが,最近の高精度超音波装置の普及に伴い,類似の膜様エコーの検出頻度が高くなってきた.今回これら膜様エコーを詳しく観察したところ,虚像と考えられる特徴を認めたため検討を加え報告する.
【対象および方法】
当クリニックにて頸動脈エコー検査を施行し,膜様エコーが観察された症例を対象として,膜様エコーの特徴を検討した.使用装置は東芝製Aplio(SSA-770A)および7.5MHz頸部用リニアプローブである.なお,プローブ依存性否定のために8.0 MHz体表用リニアプローブでも検査を施行した.
【結果】
膜様エコーの主な特徴として以下のものが認められた.①プローブの当て方によって長さや数が変化した,②頸動脈球部やプラークの下流側など,血流プロファイルが大きく変化する部位に検出された,③カラードプラで観察すると,膜様エコーは順流と逆流の境界面,あるいは高速血流と低速血流の境界面に検出された.また,異なるプローブを用いても同様に検出され,プローブ依存性がないことが証明された.
【考察】
流体力学において,粘性のある流体が拡大管を流れる場合,壁の近くで逆流が生じる現象を「境界層の剥離」といい,順流と逆流の境目は「剥離線」または「分離流線」と呼ばれている.今回の検討において膜様エコーは,この「剥離線」に一致して出現しており,血流に起因する虚像である可能性が示唆された.しかし,血流境界面における超音波の反射現象についての詳細は不明であり,モデル実験による証明が必要と考える.なお,超音波の透過性が良好な(S/Nの良い)症例において膜様エコーが高頻度に認められたことから,超音波装置の感度向上が膜様エコーの発現に強く関与しているものと考えられた.
【結語】
①血流境界面に見られる膜様エコーは,超音波診断装置の感度向上によってもたらされた新たな虚像であると考えられた.②膜様エコーについてその特徴を捉え,実像か虚像かを正しく鑑別することが重要である.