Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
血管:動脈硬化2

(S367)

動脈硬化の評価におけるStiffness Parameter

Usefulness of Stiffness Parameter β for assessment of atheroscleoris

市野 直浩1, 刑部 恵介1, 杉本 恵子1, 横井 昭1, 西川 徹2, 高井 洋次3, 井上 孝1, 鈴木 康司1, 楠原 康弘1

Naohiro ICHINO1, Keisuke OSAKABE1, Keiko SUGIMOTO1, Akira YOKOI1, Toru NISHIKAWA2, Hiroji TAKAI3, Takashi INOUE1, Koji SUZUKI1, Yasuhiro KUSUHARA1

1藤田保健衛生大学医療科学部 臨床検査学科, 2藤田保健衛生大学病院臨床検査部, 3藤田保健衛生大学病院放射線部

1Faculty of Medical Technology, School of Health Sciences, Fujita Health University, 2Department of Clinical Laboratory, Fujita Health University Hospital, 3Department of Radiology, Fujita Health University Hospital

キーワード :

【目的】
動脈硬化の変化を早期に捉えること,またその程度を評価することは,予防医学の観点からも非常に重要である.動脈硬化を評価するには,内膜中膜複合体厚(IMT:intima-media thickness)などの器質的変化を評価するものや,血管の弾性を評価するものなど種々の方法がある.Stiffness Parameter β(β値)は,血管の弾性(硬さ)を表す指標であり,血圧依存性が低く,血管壁肥厚などの器質的変化が現れる前段階において血管の機能を評価し得るものとして期待されている.今回我々は,頸動脈超音波検査を施行し,ほぼ同時かつ同部位で測定したβ値とIMTを比較検討することにより,動脈硬化の評価におけるβ値の有用性について検討した.
【対象】
某地域の住民健診にて,頸動脈超音波検査を施行し得た40歳以上の348例(男性200例,女性148例,平均年齢65.3±10.5歳)を対象とした.
【方法】
使用した超音波診断装置はALOKA社製ProSound α7である.β値は本装置のeTRACKING機能を用いて,内外頸動脈分岐部より1〜2cm中枢側の総頸動脈で測定した.IMTも本装置に搭載されているIMT自動計測機能を用い,β値を測定した部位とほぼ同じ部位で計測しmean IMTを算出した.
【結果】
(1)年齢・性別との関係:β値およびmean IMTともに加齢に伴い有意(P<0.0001)に上昇した.また性別では,mean IMTが男性で有意(P<0.0001)に高値を示したのに対し,β値では明らかな差は認められなかった.(2)β値とmean IMTの関係:両者には正の相関関係(r=0.34, P<0.0001)が認められた.そこで,mean IMTを正常群(≦1.0mm, 312例)と肥厚群(1.0mm<, 36例)に分類しβ値と比較すると,肥厚群が正常群に比し有意(P<0.001)に高値であった.さらに,348例のうちプラークが認められたものをプラーク(+)群(80例),認められなかったものをプラーク(-)群(268例)としてβ値を比較すると,プラーク(+)群で有意(P<0.0001)に高値であった.(3)mean IMT正常群におけるプラークの有無とβ値の関係:mean IMT正常群312例中,プラークが認められたものは66例(21.2%)であり,そのβ値は認められなかったものより有意(P<0.0001)に高値であった.そこで,mean IMT正常群をβ値の四分位点によって分類し,プラークが認められた割合を検討すると,0-25%に分類されたもののうちプラークが認められたものは15.0%であったが,25-50%では20.8%,50-75%では11.5%,75-100%では37.7%と,β値が高値になる程プラークの存在する割合が高率となった(P=0.0005).さらにオッズ比を算出すると,1.12(95%信頼区間:1.04-1.20)であった.
【考察】
動脈硬化を評価する方法としては,頸動脈超音波検査でIMTを測定し評価する方法が現在の主流である.しかしIMTの評価は,血管の粥状硬化をみているものであり,血管の「硬さ」は評価できない.今回の検討ではIMTが正常範囲内であるにもかかわらず,β値が高値を示したものにプラークが高率に存在していた.このことは,β値が血管の硬さの指標になるばかりでなく,プラーク発生の予測因子にもなりうることを示唆しており,β値は動脈硬化の評価に有用であると思われた.