Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
血管:動脈硬化1

(S366)

虚血性心疾患における下肢血管エコースクリーニングの有用性について

Efficacy of the screening for peripheral vascular disease in the IHD

吉野 順子1, 新沼 廣幸2, 3, 須長 美貴1, 佐久間 葉子1, 服部 加奈子1, 安齋 均2, 水野 篤2, 武田 京子3, 大出 幸子4

Junko YOSHINO1, Hiroyuki NIINUMA2, 3, Miki SUNAGA1, Yoko SAKUMA1, Kanako HATTORI1, Hitoshi ANZAI2, Atsushi MIZUNO2, Kyoko TAKEDA3, Sachiko OHIDE4

1聖路加国際病院臨床検査科, 2聖路加国際病院循環器内科, 3聖路加国際病院臨床検査科(内科), 4聖路加国際病院臨床疫学センター

1Clinical Laboratory, St.Luke’s International Hospital, 2Cardiology, St.Luke’s International Hospital, 3Clinical Laboratory Internal Medicine, St.Luke’s International Hospital, 4Education and Research Center, St.Luke’s international Hospital

キーワード :

【背景】
ライフスタイルの欧米化と高齢化により,近年動脈硬化性疾患が増加している.閉塞性末梢動脈疾患(Peripheral arterial occlusive diseases:PAD)は,動脈硬化症の一部分症であり心血管イベントの高リスク群とされ,早期診断・早期治療は重要である.
【目的】
虚血性心疾患(Ischemic Heart diseases:IHD)などの合併疾患や動脈硬化危険因子とPADの合併率について簡易下肢血管エコー検査を用いて下肢血流評価を行い,有用性について検討した.
【方法】
2010年7月〜9月に当院で心エコー図検査を施行し,間欠性跛行などの症状が無かった169名(男性123名 年齢70±11歳)に対して,同時に検査時間短縮のため足関節部からのアプローチとし前および後脛骨動脈に血管エコー検査を施行した.血流プロファイルの血流異常判定基準は,Acceleration time(AT)の延長(120msc以上),Peak Systolic Velocity(PSV)の低下,拡張期の逆流成分の消失,End Diastolic Velocity(EDV)の増加,動脈血流の消失とし,これらを陽性と判定した.IHD・糖尿病(DM)・高脂血症(HL)などの病歴については,電子カルテより検索し,PADとの合併率について検討した.超音波診断装置はPhilips iE33,探触子は7MHzリニア型を使用した.
【結果】
血管エコー陽性は169名中,24名(男性14名)であった.IHD群67名中18名(26.9%),非IHD群102名中6人(5.9%)に血流異常を認めIHD群で有意に高率(p<0.001)であった.一方,DM群では90名中21名(23.3%)に血流異常を認め,非DM群79名中3名(3.8%)に比し有意に高率(p<0.001)であった.また,HL群77名中18名(23.4%)に血流異常を認め,非HL群92名中6名(6.5%)比し有意に高率(p=0.0025)に血流異常を認めた.さらに,DM+IHD群では,45名中17名(37.8%)と高率に血流異常が認められた.またHL+IHD群でも43名中13名(30.2%)と高率に血流異常が認められた.血管エコー検査陽性であった各因子に対して,ロジスティック多変量分析を行った結果,IHDとDMは有意であった.しかし,今回HLおよび65歳以上の高齢者では有意ではなかった.
【考察】
PAD症例では側副血行路が発達した症例では,足関節エコーは正常波形プロファイルを示すため確定診断は困難であるが,足関節アプローチによる脛骨動脈のみの簡易血管エコー検査から動脈硬化危険因子を持つ患者では高率に血流異常が認められた.
【結語】
下肢動脈閉塞性病変の早期発見はPADの早期治療を可能とし,同時にIHDの早期診断も可能とする.足関節レベル簡易血管エコー検査は,心エコー図検査と同時に施行可能であり,患者負担も少ないため,IHDや動脈硬化危険因子を有する症例のスクーリング検査法として有用である.