福居 健一¹, 赤羽 たけみ¹, 白井 康代¹, 片岡 智栄子¹, 巽 志伸², 山口 美貴³, 南 朱³, 田中 利文³, 大石 元⁴, 福井 博⁵

Kennichi FUKUI¹, Takemi AKAHANE¹, Yasuyo SHIRAI¹, Chieko KATAOKA¹, Shinobu TATSUMI², Miki YAMAGUCHI³, Aya MINAMI³, Toshifumi TANAKA³, Hajime OHISHI⁴, Fukui FUKUI⁵

¹奈良県健康づくりセンター内科, ²田北病院臨床検査室, ³奈良県健康づくりセンター臨床検査室, ⁴奈良県健康づくりセンター放射線科, ⁵奈良県立医科大学第三内科

¹Internal Medicine, Nara Health Promotion Center, ²Clinical Laboratory, Takita Hospital, ³Clinical Laboratory, Nara Health Promotion Center, ⁴Radiology, Nara Health Promotion Center, ⁵The third Department of Internal Medicine, Nara Medical University

キーワード :

【目的】
第81回，83回当学術集会にてコンベックスプローブを用いた腹部大動脈の内膜中膜複合体厚（intima-media thickness:IMT）の計測は動脈硬化の評価に有用であることを報告した．今回は，対象例をさらに増やし，腹部大動脈のmax-IMTと性別，身体計測値，血圧，血液検査，喫煙などの生活習慣と加え，CAVI（心臓足首血管指数），ABI（足関節上腕血圧比），血液流動性との関連についても検討を行なった．
【対象】
2007年，2009年，2010年に当施設人間ドック検診受診者のスクリーニング腹部超音波検査を行う際に，腹部大動脈を観察したのは2090例である．10例は正確なIMTの計測が不可であった．いずれかの観察年に重複する例は観察年の早い方を用い，多種類の人間ドックコースの中で最も血液検査項目の多いコース受診者1712例（男性785例，女性927例）を対象とした．
【方法】
超音波使用機種はGE LOGIQ7，使用プローブは中心周波数5.2MHzの3.5CSコンベックスプローブである．腹部大動脈の観察時間は短時間であるため，一番観察記録が容易な腹壁から比較的近距離で総腸骨動脈分岐直前までとし，動脈壁のIMTの描出条件の良い長軸像と短軸像をハードディスクに記録した．Raw Dataにて，描出された範囲で最も肥厚した部分のIMT を計測しmax-IMT（mm）とした．max-IMTと年齢・性・ブリンクマン指数（現在，過去喫煙とも1日の喫煙本数×喫煙年数）・1日アルコール量・身体計測値（腹囲，体脂肪率，BMI）・収縮期血圧（SBP）・拡張期血圧（DBP）・総コレステロール（CHOL）中性脂肪（TG）・HDL-CHOL（HDL）・LDL-CHOL（LDL）・血糖値（BS）・HbA1c・インスリン・HOMA-IR・尿酸（UA）・CRP-HS・CAVI・ABI・MC-FANを用いた血液流動性との関連について検討した．
【成績】
男女1712例のmax-IMTと年齢の平均値±sdは1.86±1.16・52.5±8.5，男性785例では2.3±1.36・53.3±8.8，女性927例では1.49±0.8・51.8±8.2である．max-IMTと上記検討項目との相関関係について，男女例では，年齢・ブリンクマン指数・血液流動性と有意な正の相関を，腹囲・BMI・収縮期血圧・TG・BS・HbA1c・UA・左右のCAVIと弱い正の相関，HDLとの弱い負の相関を認めた．男性では，年齢と有意な正の相関を，BS・HbA1c・ブリンクマン指数・左右のCAVI・血液流動性分析と弱い正の相関を認めた．女性では，年齢と有意な正の相関を，腹囲・体脂肪率・BMI・CHOL・LDL・HbA1c・UA・ブリンクマン指数・血液流動性と弱い正の相関を認めた．次に，重回帰分析を行い，max-IMTに対する独立した関連因子を検討した．男女例では，年齢・腹囲・BMI・SBP・CHOL・TG・HDL・LDL・BS・HbA1c・UA・ブリンクマン指数・性差が，男性では，年齢・SBP・TG・HDL・BS・HbA1c・ブリンクマン指数が，女性例では，年齢・腹囲・体脂肪率・BMI・CHOL・TG・HDL・LDL・BS・HbA1c・インスリン・HOMA-IR・UA・ブリンクマン指数が独立した関連因子であった．
【結論】
コンベックスプローブを用いた腹部大動脈のmax-IMTの計測は，動脈硬化の評価に有用である．腹部超音波スクリーニング検査で行なえる簡便な動脈硬化の評価方法の一手段であり，生活習慣の改善指導に役立つと考える．