Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
循環器:先天性心疾患

(S360)

胎児診断により救命が可能となった完全大血管転位症の2例

Two babies of Complete Transposition of the Great Arties(TGA) whose outcome was improved by preneral diagnosis

山口 和子1, 川滝 元良2, 豊島 勝昭2, 麻生 俊英3, 康井 制洋4

Kazuko YAMAGUCHI1, Motoyoshi KAWATAKI2, Katuaki TOYOSHIMA2, Toshihide ASOU3, Seiyou YASUI4

1神奈川県立こども医療センター・南部病院新生児科・小児科, 2神奈川県立こども医療センター新生児科, 3神奈川県立こども医療センター心臓外科, 4神奈川県立こども医療センター小児循環器科

1Kanagawa Children’s Medical Center, Department of Neonatology, 2Kanagawa Children’s Medical Center, Department of Neonatology, 3Kanagawa Children’s Medical Center, Department of Cardiac surgery, 4Kanagawa Children’s Medical Center, Department of Pediatric Cardiology

キーワード :

【目的】
近年,産婦人科医師,超音波技師らの尽力により,胎児診断率は著しく上昇し,2009年には自施設での心臓病手術症例の半数以上が胎児診断症例となった.胎児診断により,家族は出生前から説明をうけ,治療法・施設の選択が可能となった.また,医療者側も綿密な分娩前の計画(分娩時期の検討・治療法の選択とその準備)が可能となり,今まで救命できなかった患児を救命することが可能となった.小児循環器疾患の中で,完全大血管転位症(TGA)は,出生直後から高度チアノーゼで発症し,24時間以内で死亡する疾患の中でもっとも頻度が高いが,手術成績は良好で(死亡率は2〜5%)胎児診断による予後改善が大いに期待される疾患である.しかし,胎児診断率はいまだ50%未満で,生まれてからチアノーゼに気づかれ他院より緊急搬送される症例が大部分である.我々は,これまで様々な学会でTGAの胎児診断の重要性とその画像所見について提示してきたが,今回は出生前から重症化が予測され,診断通り出生後緊急BASを必要とし,恐らく胎児診断されずに出生した場合救命が危ぶまれたであろう2症例について症例報告する.症例1 在胎32週に心奇形疑いで紹介された.胎児診断でTGAの診断.妊娠経過中は動脈管・卵円孔の開存を認めていたが,分娩前日に両方の閉鎖が疑われた.在胎38週2日 3571g Apagr score8/8で出生.出生後数分で強度のチアノーゼ(SpO2 40%)を認め,プロスグランディン製剤開始,挿管の上,NO吸入療法を開始した.出生30分後にBAS(心房中隔裂開術)施行され,NO中止可能となった.状態安定し,日齢3に根治術を施行した.症例2 在胎23週検診時にTGA疑われ紹介された.胎児診断でTGAの診断.34週時に動脈管・卵円孔ともに狭窄が疑われた.(エコー上動脈管は3箇所でくびれており,大動脈側の狭窄部でflowが乏しかった.)予定日超過し,予定帝王切開で在胎41週0日 2964g Apagr score8/8で出生.出生後数分で強度のチアノーゼ(SpO2 45%)を認め,プロスグランディン製剤開始した.出生後のエコー上も卵円孔3mmでflowも低下傾向であり,BAS(心房中隔裂開術)施行され,SpO2 85〜90%まで上昇した.状態安定し,日齢6に根治術を施行した.
【考察】
症例1,2とも出生後強度のチアノーゼを認め,TGAと胎児診断されずに心臓手術が不能な施設で出生した場合緊急搬送は必須で,場合によっては急変し蘇生を要し,救命困難な場合も予測される症例であった.胎児診断により速やかな治療(プロスグランディン製剤開始とBASなど)が可能となり,安定した状態で根治術が可能となった.
【結論】
TGAの手術成績は良好であり,胎児診断率向上による患児の生命予後の改善は明白である.全国的な疾患の周知と,胎児診断技術の早期普及が望まれる.