中島 淑江¹, 松村 誠², 小川 晴美², 有山 幸紀², 加藤 律史², 村松 俊裕², 西村 重敬², 松本 万夫², 小宮山 伸之²

Yoshie NAKAJIMA¹, Makoto MATSUMURA², Harumi OGAWA², Miyuki ARIYAMA², Ritsushi KATO², Toshihiro MURAMATSU², Shigeyuki NISHIMURA², Kazuo MATSUMOTO², Nobuyuki KOMIYAMA²

¹坂戸中央病院内科, ²埼玉医大国際医療センター心臓内科

¹Internal Medicine, Sakado Center Hospital, ²cardiovascular medicine, Saitama Medical University International Medical Center

キーワード :

【背景】
心室再同期療法（CRT）の右室リードと左室リードとの距離関係についてのデータは少ない．
【目的】
CRTの術前2Dスペックルトラッキングエコー（STE）と胸部レントゲン写真上の右室リードと左室リードとの距離が左室リバースリモデリングに及ぼす影響について検討する．
【方法】
初回CRTを施行した成人患者連続50例（平均67歳，男性72％）を検討した．手術前と術半年後の左室拡張末期容量，左室収縮末期容量を心エコーで計測し，術半年後に左室収縮末期容量が15%以上減少した29例を有効群とした．術前心エコー2D STE法で得られた短軸方向ストレインの心基部と乳頭筋レベル各々6セグメントでの，前駆出期と後収縮期を含んだ収縮期間内におけるピークストレインまでの最大の時間差（Td）で心室内非同期を評価した．術後胸部レントゲン2方向各々，右室リードと左室リードの先端との距離を測定し，直接距離，水平距離，垂直距離に分類した．また距離は心胸郭比で補正した．
【結果】
右室リードは86%が右室心尖部に留置され，左室リードは90％が冠静脈洞経由で留置された．2D STEによる左室内非同期評価は，心基部，乳頭筋レベル共に有効群でTdが優位に延長していた．（Tdbase:381±126 vs. 251±154msec, p＝0.003, Tdmid:396±98 vs. 197±138msec, p＜0.001）臨床所見，心エコー所見，左室リード位置と有効群について単変量及び多変量解析（多重ロジスティック解析）を行った結果，乳頭筋レベルでの心室内非同期のみが独立した予測因子であった．（p＝0.01）またCRT前後での左室収縮末期容量の差は有意にTdと相関関係にあった．（Tdbase:r＝0.36, p=0.01, Tdmid: r＝0.47, p=0.001）さらにCRT前後での左室収縮末期容量の差は胸部レントゲン写真での右室，左室リード間距離，補正後距離と有意な相関関係を認めた．（表）
【結論】
2D STEはCRTの有効群予測に有用であり，左室リバースリモデリングと胸部レントゲン写真上の右室，左室リード間の距離には関係があることが示唆された．