林 亜紀子, 小林 さゆき, 中原 志朗, 善利 博子, 薬袋 路子, 江口 美知子, 虎溪 則孝, 酒井 良彦, 高柳 寛

Akiko HAYASHI, Sayuki KOBAYASHI, Shiro NAKAHARA, Hiroko ZENRI, Michiko MINAI, Michiko EGUCHI, Noritaka TORATANI, Yoshihiko SAKAI, Kan TAKAYANAGI

獨協医科大学越谷病院循環器内科

Cardiology, Dokkyo Medical University Koshigaya Hospital

キーワード :

【背景】
近年心房細動 （AF） に対しアブレーション治療が施行され，そのアプローチも多様化してきた．AFの維持に心房内の複雑電位（complex fractionated electrogram: CFAE）の関与が指摘され治療の標的とされているが，左心房のリモデリングの進行に伴いその領域が減少することが報告されている．術前に心エコーにて左心房の不整脈基質を評価しうる意義は大きい．
【目的】
当科にてAFアブレーションを施行した患者群において，心エコーにて評価した術前左房機能とアブレーション中に測定し得た不整脈基質（CFAE領域）との関連について検討した．
【方法】
対象は2010年4月から同年11月まで当科にて，アブレーション施行前にAF中に経食道心エコー（TEE）を施行し得た患者23例（男性20例，平均年齢57±14歳，持続性AF 20例）．TEEにて，左心耳血流速度（LAA peak empting flow velocity; LAA eV），肺静脈血流速波形収縮期第2陽性波（PVS2）を計測した．PVS2は左右の上下肺静脈を平均し求めた．また経胸壁心エコー（TTE）にて，左房前後径，左房容積係数（TTE-LAVI），左室流入血流速波形拡張早期波E波と拡張早期僧帽弁輪運度速度E’（中隔）との比E/E’を測定した．3DCTによる左房容積係数（3DCT-LAVI）を計測し，アブレーション時にNavX systemを用いた左心房内高密度マッピング（275±62 points）により計測された左心房内のCFAE領域（cm2）と比較検討した．
【結果】
TEEにて計測を行ったLAA eV，PVS2は，3DCT-LAVIおよびアブレーション中に計測したCFAE領域と相関関係を認めなかった．またTTEにて測定したLA前後径，TTE-LAVIは，3DCT-LAVIおよびCFAE領域と相関関係を認めなかった．しかし，E/E’は3DCT-LAVIおよびCFAE領域と有意な相関関係（r=0.51, p＜0.05, r=0.53, p=＜0.05）を認めた．
【結論】
E/E’は3DCT-LAVIおよびCFAE領域と有意に相関し，左心房のリモデリングおよびAFの不整脈基質の程度を術前に評価しえる可能性が示唆された．