長屋 麻紀¹, 佐伯 茉紀¹, 青木 美由紀¹, 大西 紀之¹, 高田 義明¹, 山田 新尚¹, 小野 浩司², 田中 隆平², 野田 俊之², 渡辺 佐知郎²

Maki NAGAYA¹, Maki SAEKI¹, Miyuki AOKI¹, Noriyuki OHNISHI¹, Yoshiaki TAKADA¹, Yoshitaka YAMADA¹, Kouji ONO², Ryuhei TANAKA², Toshiyuki NODA², Sachiro WATANABE²

¹岐阜県総合医療センター臨床検査科, ²岐阜県総合医療センター循環器内科

¹Clinical Laboratory, Gifu Prefectural General Medical Center, ²Cardiovascular Internal Medicine, Gifu Prefectural General Medical Center

キーワード :

【はじめに】
　高血圧患者では左房機能の低下をきたすと言われているが，今回我々は正常者と高血圧患者で左房機能の指標をSequoia（SIEMENS社）のVelocity Vector Imaging（以下VVI法）を用いて計測，比較検討した．
【対象・方法】
　65歳以上265例の患者を，正常対象群（n=73 75±5歳），高血圧3群（厳格コントロール群BP＜130/80 n=85 74±4歳，コントロール良好群130/80≦BP＜140/90 n=64 74±5歳，コントロール不良群BP≧140/90 n=43 75±6歳）に分け，経胸壁心エコーにてLVEF，E/e’を計測し，心尖部4腔像でVVI法を用い左房（LA）の容積（LAV）及び左房機能（LA total・passive・active emptying function（EF），ストレイン，ストレインレート）を算出し，比較検討した．
【結果】
　4群において，LVEFは有意差を認めなかった．厳格コントロール群では左房容積・機能とも正常対照群と比べ有意差なく保たれていたが，コントロール良好群とコントロール不良群では，容積は有意に増大し，機能は有意に低下していた．Max LAVは正常対象群41±11ml/㎡，厳格コントロール群44±11ml/㎡，コントロール良好群52±14ml/㎡，コントロール不良群66±18 ml/㎡であった．E/e’は正常対象群8.0±1.4，厳格コントロール群8.3±1.4，コントロール良好群8.8±1.6，コントロール不良群10.3±1.8であった．LA total EFは正常対象群45±7％，厳格コントロール群45±6％，コントロール良好群41±6％，コントロール不良群33±5％であった．LA passive EFは正常対象群22±8％，厳格コントロール群20±7％，コントロール良好群16±6％，コントロール不良群13±5％であった．LA active EFは正常対象群30±8％，厳格コントロール群31±7％，コントロール良好群28±7％，コントロール不良群22±5％であった．LA Peakストレインは正常対象群24.8±6.3，厳格コントロール群24.0±5.6，コントロール良好群21.8±4.6，コントロール不良群18.2±5.0であった．左室拡張早期の左房ストレインレートは正常対象群-1.0±0.3，厳格コントロール群-1.0±0.3，コントロール良好群-0.8±0.3，コントロール不良群-0.7±0.3であった．
【結語】
　高血圧患者において，厳格コントロール群に比べコントロール良好群・不良群は，Max LAV，E/e’の上昇及び左房機能の低下を認めた．治療により血圧を低く保つことで左房機能が保持され，高齢者の心房細動やLAリモデリングを予防することができると予測される．今回用いた指標は，VVI法を用いて簡便に求めることができた．