Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
循環器:心機能

(S354)

β遮断薬治療による左室スティフネスの改善はコラーゲン分解の抑制と関連する

The correlation between collagen degradation and LV diastolic stiffness following induction of beta-blocker therapy

大江 良子, 吉田 千佳子, 廣谷 信一, 合田 亜希子, 正木 充, 中坊 亜由美, 川端 正明, 辻野 健, 増山 理

Ryoko OHE, Chikako YOSHIDA, Shinichi HIROTANI, Akiko GODA, Mitsuru MASAKI, Ayumi NAKABOH, Masaaki LEE-KAWABATA, Takeshi TSUJINO, Tohru MASUYAMA

兵庫医科大学内科学 循環器内科

cardiovascular Division, Department of Internal Medicine, Hyogo College of Medicine

キーワード :

【目的】
β遮断薬治療により心不全患者の予後は改善される.収縮不全心においてβ遮断薬治療は,左室リモデリングを抑制し,左室収縮能のみならず拡張能をも改善する.しかし,β遮断薬治療が左室拡張能を改善する機序は明らかではない.近年,心筋線維化の指標として,血清コラーゲンマーカーの測定が有用であると言われている.血清Ⅰ型プロコラーゲンC末端プロペプチド(procollagen type I C-terminal propeptide: PICP)は心臓の線維化を反映し,コラーゲン合成の指標である.また,Ⅰ型コラーゲンC末端テロペプチド(collagen type I C-terminal telopeptide: CITP)はコラーゲン分解の指標である.そこで今回我々は,収縮不全心においてβ遮断薬治療に伴う左室拡張能の変化と心筋線維化との関連を検討した.
【対象と方法】
慢性心不全患者46例を対象とした.男性31例,女性15例,平均年齢は56±14歳.心不全症状安定後にβ遮断薬(bisoprolol)を少量から開始し,最大目標投与量を5〜10mg/dayとした.導入前と導入後2,6,12カ月後に心エコー図検査を施行した.胸骨左縁左室長軸像より左室拡張末期径(LVDd)を記録した.左室スティフネスの指標として,パルスドプラ法で左室流入血流速波形を記録し,拡張早期波の減速時間(DcT)を計測した.左室弛緩能の指標として,組織ドプラ法にて心尖部4腔像より心室中隔基部の僧帽弁輪運動速波形を記録し,拡張早期僧帽弁輪移動速度(E’)を計測した.同時に血清PICP,CITPを測定した.
【結果】
β遮断薬治療により,左室駆出率(LVEF),LVDd,DcT,E’はそれぞれ改善した.PICPは変化しなかったが,CITPは有意に減少した.CITP変化率とLVDd変化率は相関を認めた(r=0.32, p<0.01).CITP変化率とDcT変化率との間には負の相関関係を認めた(r=-0.21, p<0.05).一方,E’の変化率との間には関連を認めなかった.PICPの変化率とLVDd,DcTおよびE’の変化率との間にも有意な関連は認めなかった.
【結論】
収縮不全心では,β遮断薬治療によりコラーゲン分解が抑制され,左室が縮小し,左室スティフネスが改善する可能性が示唆された.