英文誌(2004-)
一般口演
循環器:心筋ストレイン2 方向
(S349)
Dahl食塩感受性ラットにおいて長軸方向ストレイン低下は心内膜側心筋線維化と関連する
Depression of longitudinal strain relate to subendocardialfibrosis of myocardium in Dahl salt sensitive rat.
腰塚 瑠美
Rumi KOSHIZUKA
筑波大学大学院人間総合科学研究科
Comprehensive human sience, The University of Tsukuba Graduate school
キーワード :
【背景】
スペックルトラッキング法による心筋ストレイン解析によって,左室駆出分画(EF)評価では検出できない心機能異常の評価が可能となった.特に心室3方向のストレイン解析によって心室心筋線維方向に基づく壁運動の定量化が可能である.従来の臨床および動物モデルによる検討において,左室長軸方向の壁運動は心内膜側心筋収縮機能と関連しており,心筋虚血や心筋線維化による心筋障害を反映すると報告されている.最近,小動物心エコー図検査でもスペックルトラッキング法による心機能評価が可能となったことから,スペックルトラッキング法によって検出された心機能異常について組織学的な検討を加えられると考えた.本研究の目的は,拡張不全心モデルであるDahl食塩感受性ラットにおいてストレイン解析を行い,高血圧心の進行に伴うストレイン値の変化と心筋線維化との関連を明らかにすることである.
【方法】
Dahl食塩感受性ラットを8%の食塩含有飼料を与えた高食塩群,0.3%食塩を与えた低食塩群に分けた.6週齢より各飼料を与え,8,10,および12週齢に心エコー図を記録した.超音波診断装置はプライムテック社製Vevo2100,探触子はリニアスキャン式MS-250(周波数20.0MHz)を使用した.心エコー図検査はイソフルラン麻酔下に専用のVevoイメージングステーション上に臥位に固定して行った.Bモード像はフレーム数120fpsで左室長軸断面と左室中部短軸断面を記録した.画像解析はオフライン解析装置で行い,短軸断面像の左室拡張期径,左室壁厚,および収縮期径を計測した.スペックルトラッキング法を用いて長軸断面像において長軸方向ストレイン(longitudinal strain: LS),短軸断面において中心方向ストレイン(radial strain: RS),および円周方向ストレイン(circumferential strain: CS)を解析した.また,心筋線維化の程度を評価するため,摘出した心臓標本を心内膜側から厚さ4μmに薄切しマッソントリクローム染色を行った.心内膜側,中間層,および心外膜側の組織標本においてKeyence社製BZ Analyzer-IIを用いて視野中の線維化面積の割合(線維化率)と心筋線維の幅を計測した.
【結果】
心エコー図記録時の心拍数は315±90bpmであった.低食塩群と比べ高食塩群は有意な血圧の上昇と壁厚の増加が認められた(血圧,209±32 vs.126±29 mmHg, p=0.003 ; 壁厚, 2.3±0.2 vs. 1.9±0.2mm, p=0.001 ).左室EF,RS,およびCSは2群間で有意差が認められなかった(高食塩群vs.低食塩群: EF,71±5 vs.71±5%; RS, 37±4 vs. 49±14%, p=0.07; CS, -32±3vs. -35±3%).一方,LSは高食塩群で有意に低下していた(-25±3vs. -19±4%, p=0.02).組織線維化率は高食塩群の心内膜側で有意に大であった(高食塩群vs.低食塩群: 心内膜側, 9.6±4.7 vs. 3.7±1.9%, p=0.001; 中間層, 5.1±2.8 vs. 3.1±1.7%, p=0.2; 心外膜側, 2.5±1.6 vs. 2.3±1.6%).一方,心筋線維の幅には有意差が認められなかった(高食塩群vs.低食塩群:心内膜側, 185±48 vs. 168±35μm; 中間層, 153±37 vs. 153±25μm; 心外膜側, 179±63 vs.180±49μm).
【結論】
左室EFが保たれた高血圧性拡張不全動物モデルにおいてLSのみが有意に低下し,心内膜側の線維化が高度であった.これらの知見は長軸方向の心筋動態の評価が潜在的な心内膜側心筋障害の検出方法として有用であるという従来の報告を支持すると考えられる.