日置 彩那, 浅沼 俊彦, 増田 佳純, 櫻井 大輔, 岩崎 真梨子, 中谷 敏

Ayana HIOKI, Toshihiko ASANUMA, Kasumi MASUDA, Daisuke SAKURAI, Mariko IWASAKI, Satoshi NAKATANI

大阪大学大学院　医学系研究科機能診断科学講座

Division of Functional Diagnosis, Osaka University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
3Dスペックルトラッキング法にて求められる心内膜面の局所面積変化率 （area tracking ratio）は虚血評価に有用であるとされている．Post-systolic shortening （PSS）は2Dスペックルトラッキング法において虚血の鋭敏な指標とされているが，3Dスペックルトラッキング法における意義は不明である．
【目的】
3Dスペックルトラッキング法のarea tracking ratioから求めたPSSにより虚血領域を同定することができるか検討する．
【方法】
麻酔開胸犬10頭を用い，左冠動脈回旋枝にオクルーダーと血流プローブを装着し，冠動脈血流をモニターしながらオクルーダーを段階的に締めることにより種々の程度の低還流状態を作成した（ベースライン血流量を100 %として，50-80 %を軽度狭窄，20-50 %を重度狭窄，0 %を完全閉塞）．各状態において東芝社製Aplio Artida^TM （volume rate : 35.0 vps）を用いて3D画像からarea tracking ratio profileを解析し，虚血領域と正常領域の中心部における収縮期最大値 （ε_sys）とPSS指標であるpost-systolic index （PSI）を求めた．左室16セグメントにおいてベースライン時のε_sysとPSIを求め，各平均値の±2SDを超えるセグメントを異常領域と定義し，ε_sysとPSIにより評価された異常領域と回旋枝閉塞後に注入したエバンスブルーにより評価した虚血領域を比較した．
【結果】
虚血領域は正常領域に比べ，ε_sys，PSIともに重度狭窄時（ε_sys ; -12.3±7.3 vs. -18.6±5.7 %, p = 0.003, PSI ; 0.24±0.32 vs. 0.02±0.05, p = 0.011），閉塞時（ε_sys ; -5.6±4.8 vs. -22.8±8.0 %, p ＜ 0.0001, PSI ; 0.53±0.42 vs. 0±0, p = 0.0001）において有意な変化を示した．エバンスブルー染色より評価した虚血領域に対して，ε_sysで評価した異常領域の割合は，軽度狭窄時0 %，重度狭窄時13 %，閉塞時54 %であった．一方，PSIではそれぞれ17 %，30 %，67 %となり，ε_sysに比べ大きい傾向が認められた．
【結語】
3Dスペックルトラッキング法でarea tracking ratioから求めたPSSは，虚血領域の評価に有用である．