濱野 陽子¹, 鈴木 健吾², 田端 千里¹, 宮内 元樹¹, 菊池 秀和¹, 黄 世捷², 高井 学², 桜井 正児¹, 辻本 文雄³, 信岡 祐彦³

Yoko HAMANO¹, Kengo SUZUKI², Chisato TABATA¹, Motoki MIYAUCHI¹, Hidekazu KIKUCHI¹, Seisho KOH², Manabu TAKAI², Masaru SAKURAI¹, Fumio TSUJIMOTO³, Sachihiko NOBUOKA³

¹聖マリアンナ医科大学病院臨床検査部　超音波センター, ²聖マリアンナ医科大学病院循環器内科, ³聖マリアンナ医科大学病院臨床検査医学講座

¹Department of Laboratory Medicine, US Center, St. Marianna University School of Medicine, ²Division of Cardiology, Department of Internal Medicine, St. Marianna University School of Medicine, ³Department of Laboratory Medicine, St. Marianna University School of Medicine

キーワード :

【背景・目的】
S字状中隔（Sigmoid septum）の臨床的意義は少ないと考えられているが，ときに左室流出路狭窄の原因となり得ることが指摘されており，胸痛，息切れ，失神へ関与するといわれている．左室流出路狭窄を安静時に認めなくても，ある条件下で狭窄が誘発される潜在性左室流出路狭窄を安静時心エコー検査で予測することが可能であるか．今回，我々はSigmoid septumを有する患者において潜在性左室流出路狭窄の予測因子を検討した．
【方法】
何らかの胸部症状があり，スクリーニングの心エコー検査でSigmoid septumを認めた30名（男性13名，女性17名，平均年齢69.2±8.8歳）を対象とした．超音波装置vivid E9を用いて，対象者全例にドブタミン負荷心エコーを実施し，左室流出路狭窄が誘発された16名（peak velocity＞3.0m/s）と誘発されなかった14名の2群において心エコー指標を検討した．
【結果】
年齢，性別，身長，体重は両群間で有意差を認めなかった．心エコー指標では相対的壁厚（RWT），左室収縮末期径（LVDs），左室重量係数（LVMI）において有意差を認めた（RWT：0.49±0.10 vs 0.39±0.06，LVDs：24.3±1.0 vs 27.4±0.8，LVMI：87.3±3.8 vs 75.4±4.1 p＜0.05）．ドブタミン負荷時の左室流出路血流速度はRWT （r=0.57），LVDs （r=0.44） それぞれと有意な相関関係を認めた（p＜0.05）．多変量解析ではRWTが左室流出路狭窄の独立した規定因子であった（R2=0.42）
【結論】
Sigmoid septumを有する症例において，左室拡張末期径に占める後壁厚の比である相対的壁厚は，潜在性左室流出路狭窄の予測因子となり得ると考えられた．