Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
循環器:その他

(S345)

医原性気胸の診断における経胸壁超音波検査の有用性

Diagnostic utility of thoracic ultrasound in iatrogenic pneumothorax

渋谷 圭, 対馬 義人, 堀底 枝里, 倉林 剛巳, 島田 健裕, 平澤 聡, 小山 佳成, 天沼 誠, 遠藤 啓吾

Kei SHIBUYA, Yoshito TSUSHIMA, Eri HORISOKO, Takemi KURABAYASHI, Takehiro SHIMADA, Satoshi HIRASAWA, Yoshinori KOYAMA, Makoyo AMANUMA, Keigo ENDO

群馬大学医学部附属病院画像診療部

Department of diagnostic and interventional radiology, Gunma University Hospital

キーワード :

【目的】
気胸の初期検査としては胸部単純写真が広く用いられているが,その診断能は不十分で特に臥位では半数以上の気胸は描出されないといわれている.外傷や集中治療領域ではすでに気胸の検出に関する超音波検査の有用性が報告されているが,医原性気胸に関する報告はほとんどない.またCTをgold standardとした研究は少ない.本研究の目的は,医原性気胸の診断における超音波診断装置の感度,特異度および臨床的有用性を明らかにすることである.
【対象と方法】
2009年12月から2010年12月の間に当院画像診療部において,気胸を生じる可能性のある手技を施行した65症例(男性:42例,女性:23例)を対象とした.年齢の中央値は66歳(14〜86歳).手技の内容は経皮的肺生検が51例,肺ラジオ波焼灼術が8例,肺切除術前のマーカー刺入が6例であった.手技施行直後に手技担当医とは別の医師が前胸壁肋間よりリニア型高周波探触子(9MHz)を用いて超音波検査を施行し,手技施行側および対側の動画および静止画を記録した.記録した画像は手技内容および臨床情報を盲検化した状態で超音波検査の経験のある医師が別個に読影し,術直後に撮影したCTをgold standardとして超音波検査の診断能を評価した.CTで穿刺部周囲に限局しており,かつ厚さが1cm以下のものは限局性気胸と定義した.また,手技翌日に立位または座位で胸部単純写真を撮像し,気胸の残存の有無を評価した.
【結果】
26例 (40.0%)の気胸がCTで同定された.限局性気胸は7例で,いずれも翌日の胸部単純写真では気胸は同定されずその後の臨床的な介入は不要であった.限局性気胸を除いた19例 (29.2%)に対する超音波検査の感度は73.7% (14/19例),特異度は100% (46/46例),陽性的中率は100% (14/14例),陰性的中率は90.2% (46/51例)であった.19例中5例 (7.7%)で穿刺吸引または持続的な胸腔ドレナージによる治療が必要であった.治療を要した気胸に対する超音波検査の感度は100% (5/5例),特異度は85.0% (51/60例),陽性的中率は35.7% (5/14例),陰性的中率は100% (51/51例)であった.
【考察】
医原性気胸の検出において超音波検査は高い診断能を有することが確認された.限局性気胸を除いた解析では気胸の検出における超音波検査の特異度は高く確定診断に有用であると考えられる.また,治療が必要な気胸に対する超音波検査の陰性的中率は極めて高く,治療が必要な気胸を除外できる.経胸壁超音波検査は極めて簡便に施行できX線被曝を伴わないため,医原性気胸の検出においてはまず試みるべき検査と考えられる.
【結論】
医原性気胸の検出に経胸壁超音波検査は有用であり,治療が必要な気胸を除外することが可能であった.