髙松 泉¹, 松原 広己², 中山 弘美¹, 藤田 圭二¹, 中井 稔¹, 小川 愛子², 宗政 充²

Izumi TAKAMATSU¹, Hiromi MATSUBARA², Hiromi NAKAYAMA¹, Keiji FUJITA¹, Minoru NAKAI¹, Aiko OGAWA², Mitsuru MUNEMASA²

¹独立行政法人　国立病院機構　岡山医療センター臨床検査科, ²独立行政法人　国立病院機構　岡山医療センター循環器科

¹Division of Clinical Laboratory, National Hospital Organization Okayama Medical Center, ²Division of Cardiology, National Hospital Organization Okayama Medical Center

キーワード :

【はじめに】
推定肺動脈（PA）圧を心エコー図のパラメータから評価する指標は数多く報告されてきた．中でも三尖弁逆流（TR）から求めた右室-右房圧較差は，PA圧と最も相関すると報告されている．しかし，肺高血圧症治療が奏効するに伴いTRの程度が軽減し，微量となってしまうとエンべロープの描出が難しく過小評価となる傾向があり，その数値の信頼性には議論があるうえ，治療評価上重要となる平均PA圧の直接的な推定も困難である．こういった場合，胸骨左縁短軸像での圧排像からもある程度のPA圧評価は可能であるが，左室圧によって圧排の程度が変化するため，その補正が問題となる．今回我々は，胸骨左縁短軸像での圧排像の横縦比を，体血圧によって補正することにより，平均PA圧評価の信頼性を高める検討を行った．
【対象と方法】
対象は，肺高血圧症と診断され2003年4月より2010年12月の間当院にて心臓カテーテル検査と心エコー図を同時期に施行した83例（男性21名，女性62名，年齢15-81歳）とした．心臓カテーテル検査による肺動脈平均圧（PAm）と，心エコー図での三尖弁逆流圧較差（TR⊿P），胸骨左縁短軸像腱索レベルでの収縮期と拡張期の心腔内横縦比（CH.s indexとCH.d index），胸骨左縁短軸像乳頭筋レベルでの収縮期と拡張期の心腔内横縦比（PM.s indexとPM.d index）の各パラメータとの相関を検討した．さらに，収縮期体血圧値120mmHg以上の症例では，TR⊿P以外の各パラメータの計測値を平均体血圧にて補正した数値も算出し，同様に相関を検討した．
【結果】
心臓カテーテル検査でのPAmとの相関係数は，1）CH.s index 0.356，CH.d index0.383，PM.s index 0.498，PM.d index 0.396と有意な相関は認めなかった．2）収縮期体血圧120mmHg未満に限定すると，CH.s index 0.454，CH.d index 0.489，PM.s index 0.648，PM.d index 0.507と乳頭筋レベルのパラメータで中等度の相関を認めた．3）収縮期体血圧体血圧120mmHg以上では，CH.s index 0.467，CH.d index 0.521，PM.s index 0.410，PM.d index 0.376と有意な相関は認めなかった．平均体血圧による補正を行った結果，CH.s index 0.656，CH.d index 0.854，PM.s index 0.663，PM.d index 0.750といずれも相関係数は上昇し特にCH.dとPM.dでは強い相関が認められた．
【まとめ】
心エコー図による胸骨左縁短軸像での圧排像を用いて平均PA圧を評価する場合は，左室圧も考慮して体血圧で補正することにより信頼性が高いデータになることが判明した．