Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
循環器:症例2

(S335)

三尖弁閉鎖不全症で手術を要した卵巣カルチノイド腫瘍の一例

Severe tricuspid regurgitation associated with ovarian cacinoid tumor

繼 敏光1, 岩永 史郎1, 村田 光繁1, 鶴田 ひかる1, 団 真紀子2, 羽鳥 泰子2, 岡本 明美2, 近藤 麻紀子2, 篠原 純子2

Toshimitsu TSUGU1, Shiro IWANAGA1, Mitsushige MURATA1, Hikaru TSURUTA1, Makiko DAN2, Yasuko HATORI2, Akemi OKAMOTO2, Makiko KONDO2, Junko SHINOHARA2

1慶應義塾大学病院医学部循環器内科, 2慶應義塾大学病院中央臨床検査部心機能室

1Cardiology Division-Department of Medicine, Keio University School of Medicine, 2Non-invasive Cardiology Laboratory, Keio University Hospital

キーワード :

カルチノイド心疾患では,カルチノイド腫瘍から分泌されるセロトニンなどの生体活性物質によって,主に右心系の弁膜が障害される.心合併症の発生頻度は本邦では約3%といわれ,稀な心疾患である.今回われわれは経胸壁心エコー検査,経食道心エコー検査でカルチノイド心疾患を疑ったが腫瘤を発見することができず,三尖弁置換術のみをおこなった症例を経験したので報告する.症例は53歳女性.49歳頃から顔面および下腿の浮腫,息切れを自覚するようになり,心エコー検査で高度三尖弁閉鎖不全(TR)を指摘された.大学病院など三次医療機関の循環器内科を紹介されて精査を受け,Ebstein奇形などの先天性三尖弁閉鎖不全症と診断され,利尿薬で治療されていた.その後,症状が増悪したため,手術を目的として,当院心臓外科を受診した.当院で施行した経胸壁心エコー検査では,三尖弁は腱索と一体となって肥厚し,弁葉は短縮していた.三尖弁弁葉の可動性が消失していて,開放位で固定されていた.高度三尖弁閉鎖不全と,右房,右室の拡大を認めた.肺動脈弁,大動脈弁,僧帽弁に異常はみられなかった.経食道心エコー検査でも,三尖弁の形態は経胸壁心エコー検査と同様の所見であり,卵円孔開存などの心内シャントは認めなかった.抗パーキンソン薬などによる薬剤性弁膜症やカルチノイド症候群に伴う弁膜症を疑ったが,麦角系ドパミン作動薬の内服歴はなかった.胸部から骨盤腔までのCT検査で子宮筋腫をうたがわせる腫瘤を認めたが,術前に十分な精査をせずに三尖弁置換術(Mosaic生体弁 27 mm)を施行した.術後経過は良好であった.最近,患者から連絡があり,昨年52歳時に子宮筋腫と診断されていた腫瘤の摘出術を受け,卵巣原発のカルチノイド腫瘍と診断されたと伝え聞いた.腫瘍摘出後1年を経過したが,生体弁の変性や逆流の再発を認めていない.