Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
循環器:症例2

(S335)

肺動脈内異常血流が診断のきっかけとなった冠動脈気管支動脈瘻の一例

The case of coronary-bronchial artery fistulas its abnormal flow of intra-pulmonary artery becomes the chance of diagnosis.

佐藤 大輔1, 恒任 章1, 土居 寿志1, 吉住 敏男2, 赤司 良平3, 向井 望4, 山近 史郎5, 前村 浩二1

Daisuke SATO1, Akira TSUNETO1, Yoshiyuki DOI1, Toshio YOSHIZUMI2, Ryohei AKASHI3, Nozomi MUKAI4, Shiro YAMACHIKA5, Koji MAEMURA1

1長崎大学病院循環器内科, 2長崎大学病院超音波センター, 3済生会長崎病院循環器内科, 4済生会長崎病院検査部, 5春回会井上病院循環器科

1Department of Cardiovascular Medicine, Nagasaki University Hospital, 2Ultrasonic Center, Nagasaki University Hospital, 3Department of Cardiovascular Medicine, Saiseikai Nagasaki Hospital, 4Ultrasonic Center, Saiseikai Nagasaki Hospital, 5Department of Cardiovascular Medicine, Syunkaikai Inoue Hospital

キーワード :

症例は26歳男性.生来健康で,健康診断でも特に異常を指摘されたことはなかった.2010年10月失神があり,近医へ救急搬送された.その際の経胸壁心エコーで,主肺動脈内で肺動脈弁上部から肺動脈末梢側へ向かう拡張期異常血流が確認された.肺動脈弁分岐部から肺動脈弁へ向かう連続性血流の動脈管開存症と異なっていた.冠動脈起始部の拡大や心内腔の拡大はなかった.失神および,肺動脈内異常血流の精査加療目的で当科へ入院した.失神に関しては,神経調節性失神(混合型)と診断.肺動脈内異常血流の精査のため,冠動脈CTを施行した.結果,大動脈・肺動脈周囲に蛇行した異常血管が密集しており,右冠動脈と左前下行枝にシャントを形成.その起源は気管支動脈で,そこから連続して異常血管が認められた.冠動脈CTでは,冠動脈と肺動脈の連続性は診断できなかった.また,心エコーでは冠動脈気管支動脈瘻を示唆する所見は明らかではなかった.しかし,心エコーで確認された肺動脈異常血流は,冠動脈CTの所見と照らし合わせると,拡張期に確認されるジェット血流である事から,冠動脈気管支動脈瘻が肺動脈にも開口している事を示唆する所見であると考えた.経胸壁心エコーでの肺動脈内異常血流が診断のきっかけとなった冠動脈気管支動脈瘻の一例を経験した.冠動脈気管支動脈瘻の頻度は,報告では1000例あたり0.08例程度といわれ,臨床上問題となるのは,冠動脈本幹の狭窄や冠盗血症候群による狭心症の出現である.診断には冠動脈造影,冠動脈CTが有用である.本例は冠危険因子のない若年男性で,経胸壁心エコーで確認された肺動脈内異常血流が,冠動脈CT撮影および診断のきっかけとなった.