北田 弘美¹, 岡田 昌子², 福嶋 友孝¹, 森 智美¹, 小川 恭子¹, 寺本 美穂¹, 内藤 雅文¹, 加藤 穣², 佐伯 一², 長谷川 新治²

Hiromi KITADA¹, Masako OKADA², Tomotaka FUKUSHIMA¹, Tomomi MORI¹, Kyouko OGAWA¹, Miho TERAMOTO¹, Masfumi NAITOU¹, Minoru KATOU², Hajime SAEKI², Shinji HASEGAWA²

¹大阪厚生年金病院臨床検査科, ²大阪厚生年金病院循環器内科

¹Division of Clinical Laboratory, Oosaka Koseinenkin Hospital, ²Division of Cardiology, Oosaka Koseinenkin Hospital

キーワード :

症例は，60歳代男性．2008年より肺扁平上皮癌にて放射線・化学療法を施行．2010年2月胃腺癌の術前検査で高度房室ブロックを認めたため永久ペースメーカー植込み術を施行した．5月に癌性心膜炎によると思われる心タンポナーデに対して心嚢ドレナージを施行．2010年7月胸部不快を訴えて当院に来院．心室ペーシング波形のため心電図変化は明らかでなかったが，心臓超音波検査で中隔から下壁基部に壁運動異常を認めたため，急性心筋梗塞を疑い緊急冠動脈造影を施行した．右冠動脈近位部に閉塞を認め，直ちにステント留置術を施行した．後日心臓超音波検査，造影CTによって右冠動脈近位部，心室中隔，三尖弁輪，右房内に多発性の腫瘤性病変を認めた．右冠動脈近位部に留置されたステントは腫瘤性病変の内部を走行しており腫瘍の増殖により冠動脈の内腔が圧排され急性心筋梗塞を来したと考えられた．腫瘍性病変が心臓原発かあるいは肺や胃からの転移性病変なのか不明であったが，心臓腫瘍が冠動脈を巻き込んで心筋梗塞を発症した報告例は少なく，文献的考察を踏まえて報告する．