Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
循環器:症例1

(S333)

心筋梗塞後に発症した解離性心筋内血腫の一例

A Case of Dissecting Intra-Myocardial Hematoma Caused after Recent Myocardial Infarction

古川 邦子1, 長友 英里香2, 鬼塚 久充2, 川越 純志2, 石川 哲憲2, 鶴田 敏博2, 今村 卓郎2, 北村 和雄2

Kuniko FURUKAWA1, Erika NAGATOMO2, Hisamitsu ONITSUKA2, Junji KAWAGOE2, Tetsunori ISHIKAWA2, Toshihiro TSURUDA2, Takurou IMAMURA2, Kazuo KITAMURA2

1宮崎大学医学部附属病院検査部, 2宮崎大学医学部附属病院第一内科

1Clinical Laboratory, Miyazaki University Hospital, 2The First Department of Internal Medicine, Miyazaki University Hospital

キーワード :

【はじめに】
心筋梗塞の合併症として,解離性心筋内血腫(dissecting intra-myocardial hematoma DIH)は中隔穿孔の亜型あり,稀な病態である.
【症例】
58歳 男性.1989年より慢性関節リウマチにて加療中であった.2007年より左房内腫瘍疑いで当院の循環器内科で定期的にフォローされていた.2010年2月中旬より胸部不快感,労作時の息切れを自覚していたが放置していた.2月26日介護施設で心電図を施行しV1〜4にQSパターンを認めたが,経過観察とされていた.3月26日,当院循環器内科受診時の定期の心電図でV1〜V5に陰性T波を伴うST上昇とQSパターンの出現を認めたため,心エコーを施行した.心エコー所見では,左室心尖部心筋は内外2層に解離し,心外膜側心筋はakinesis,心内膜側心筋がflap状に大きく波打つように左室内で動き,心筋の解離を疑う所見であった.その解離した心筋内には血腫と思われるlow intensity areaを伴っていたが心室中隔穿孔を疑う所見は得られなかった.採血では心筋逸脱酵素の上昇なく発症時期不明の心筋梗塞に合併したDIHを疑い,緊急入院となった.冠動脈造影では,左前下行枝#7の閉塞を認めたが,血行再建は行わなかった.後日行った安静時Tl心筋シンチグラムでは,心尖部にTlの集積なく心筋のバイアビリティはないと判断された.MRIでは,左室心尖部前壁にかけて血腫と思われる領域がみられ,菲薄化した心筋壁が取り囲んでいた.さらにdynamic造影では,解離腔に造影剤の流入なく心室腔との境界も明瞭で遅延造影では周囲の梗塞巣が増強され,心室内解離腔の血栓を疑う所見であった.治療についてDIHに関しては手術の適応が明らかではなく,本症例は急性期を過ぎており改善傾向であったため経過観察となった.3月29日の心エコーでは心室の解離腔は血栓傾向を呈し,剥離した心内膜の可動性は低下していた.4月6日の心エコーでは心内膜面のflapは認めなかった.
【まとめ】
心筋梗塞に合併したDIHの症例を,心エコーで診断及び経過観察を行うことができた.DIHでは迅速な診断を行うこと,解離の部位や心内腔からのflowの有無,血腫の進展の状態を評価することが治療法を選択するうえで重要なポイントであった.