青木 竜男¹, 高橋 健太郎¹, 本多 勇希¹, 松井 幹之¹, 後藤 敏和¹, 深沢 学²

Tatsuo AOKI¹, Kentarou TAKAHASHI¹, Yuki HONDA¹, Motoyuki MATSUI¹, Toshikazu GOTO¹, Manabu FUKASAWA²

¹山形県立中央病院循環器内科, ²山形県立中央病院心臓血管外科

¹Department of Cardiovascular Medicine, Yamagata Prefectural Central Hospital, ²Department of Cardiovascular Surgery, Yamagata Prefectural Central Hospital

キーワード :

【はじめに】
若年性大動脈弁狭窄症（AS）の原因として弁の先天奇形があるが，その多くは大動脈二尖弁である．大動脈一尖弁も稀な原因とされるが本邦での報告例は少ない．今回，我々は大動脈一尖弁によるASの2例を経験したので報告する．
【症例報告】
症例1：50代，男性．主訴）動悸，立ちくらみ．既往歴）発作性心房細動．家族歴）父親が40代で突然死．現病歴）動悸と立ちくらみを主訴に当院急患室を受診．心電図上，心拍数130台，2:1伝導の心房粗動を認め，電気的除細動で停止．この際の心エコーにて大動脈弁狭窄症が診断され，経食道エコーで大動脈一尖弁を認めた．心臓カテーテル検査で大動脈弁の圧較差は170mmHg，弁口面積は0.5cm²と高度のASを認めた．上行大動脈の拡大も伴っており，大動脈弁置換術および大動脈基部置換術を施行した．術中の所見でも大動脈一尖弁であった．
症例2：30代，男性．主訴）息切れ．既往歴）高校生の頃から心雑音を指摘され運動は控えていた．現病歴）労作時の息切れを主訴に外来を受診．経胸壁心エコーにて大動脈一尖弁によるASが疑われ，経食道エコーで大動脈一尖弁と診断（Figure A）．圧較差は90mmHg．大動脈弁置換術を施行．術中の所見でも大動脈一尖弁であった（Figure B）．
【考察】
大動脈一尖弁は成人で心エコーを受けた症例の0.02%，大動脈弁狭窄症に対して大動脈弁置換術が施行された症例の6%で認められるとの米国文献も見られるが，本邦での成人例の報告は少ない．早期に大動脈弁狭窄症を呈する事が多いため，小児期に診断されることが多く，また，大動脈二尖弁と同様に上行大動脈の拡大を伴うことが多いとされ，今回の症例1でも同様の所見を認めており，症例2では弁輪部拡大を認めた．大動脈一尖弁は交連部を一つ持つタイプと交連部を全く持たないタイプに大別され，交連部を持たないタイプは 左心低形成に合併する．本症例では2例とも交連部を1つ持つタイプであった．