Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
基礎:組織性状

(S329)

静脈内腔からの40 MHz超音波散乱波の正規化パワースペクトルによる赤血球凝集度評価

Evaluation of Red Blood Cell Aggregation by Normalized Power Spectrum of 40 MHz Ultrasonic Wave Scattered at Lumen of Vein

福島 拓1, 関 竜太郎2, 長谷川 英之1, 2, 金井 浩1, 2

Taku FUKUSHIMA1, Ryutaro SEKI2, Hideyuki HASEGAWA1, 2, Hiroshi KANAI1, 2

1東北大学大学院工学研究科電子工学専攻, 2東北大学大学院医工学研究科行医工学専攻

1Department of Electronic Engineering, Graduate School of Engineering, Tohoku University, 2Department of Biomedical Engineering, Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University

キーワード :

【はじめに】
赤血球凝集は血液の粘性を決定する要因の一つであり,血液のレオロジーに重要な役割を果たす要素として注目されている[1].過剰な赤血球凝集は,血栓症,動脈硬化,糖尿病,脂質異常症といった疾患につながる要因となるため,赤血球凝集度の評価は重要な課題となっている.
【原理】
赤血球は長径でおよそ8 μmと数十 MHz超音波の波長(数十 μm)と比較して十分小さい散乱体である.さらに,赤血球と血漿との音響インピーダンスの差が小さいため,赤血球からの超音波散乱波の振幅は非常に小さい.そのため,本研究では微小な散乱体からの散乱特性が周波数の4乗に比例する点に着目し,赤血球からの超音波散乱波の周波数解析を行う.さらに,反射超音波には周波数依存性がないことを利用し,赤血球からの超音波散乱波のパワースペクトルPs(f)を,ほぼ同じ伝播経路で計測した反射波のパワースペクトルPr(f)で正規化を行うことにより,トランスジューサの送受信特性G(f)と伝播媒質の減衰特性A(f)を除去する.また,計測された正規化パワースペクトルと散乱体粒子直径2aa = 2, 3, 4, ・・・20μm)ごとの理論対数パワースペクトルとの差の二乗和αを算出し,最小のαを与える理論対数パワースペクトルを決定することで,散乱体サイズ2aを推定する.
【結果】
手甲静脈を対象として計測を行い,Tomey社製超音波診断装置UD-1000(中心周波数: 40 MHz)の受信超音波出力を1 GHzで標本化した.手甲静脈は径が大きく血流が速いため,安静時に赤血球凝集は起こりにくい.そのため,上腕に対して250 mmHgの圧力で駆血を行い,血流を低下させることで,赤血球凝集が発生し易い状況において計測を行った.計測は安静時に2分間,駆血を行い5分間,駆血開放後さらに3分間の計10分間行った.図に散乱体サイズの経時変化と安静時,駆血時,駆血開放後におけるBモード像を示す.駆血時に推定された散乱体の粒子直径(10‐28μm)は安静時や駆血開放後の散乱体の粒子直径(4‐8μm)に比べて大きい結果となったことから,赤血球凝集の変化を経時的に観察することができたと考えられる.
【まとめ】
本報告の結果より,パワースペクトルの正規化による非侵襲的な赤血球凝集度評価の可能性を示すことができた.
【謝辞】
診断装置の使用に関してご協力頂いている(株)トーメーコーポレーションに感謝致します.
【参考文献】
[1]D. G. Paeng, et al., Ultrasound Med. Biol., 30(1), 45-55, 2004.