Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
基礎:イメージング3

(S328)

エコー減衰の周波数特性に着目した脂肪肝評価

Evaluation of fatty liver based on frequency characteristic of echo attenuation

孟 祥〓1, 神山 直久2, 丸山 紀史3, 石橋 啓如4, 今関 文夫4, 横須賀 収4, 山口 匡5

Xiangxin MENG1, Naohisa KAMIYAMA2, Hitoshi MARUYAMA3, Hiroyuki ISHIBASHI4, Fumio IMAZEKI4, Osamu YOKOSUKA4, Tadashi YAMAGUCHI5

1千葉大学大学院工学研究科, 2東芝メディカルシステムズ株式会社機器開発部, 3バージニア・コモンウェルス大学消化器内科, 4千葉大学大学院医学研究院腫瘍内科学, 5千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター

1Graduate School of Engineering, Chiba University, 2Application & Research Group, Toshiba Medical Systems Corporation, 3Division of Gastroenterology and Hepatology, Virginia Commonwealth University, 4Department of Medicine and Clinical Oncology, Graduate School of Medicine, Chiba University, 5Research Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University

キーワード :

【はじめに】
脂肪が沈着した肝臓のエコー画像の特徴の一つに深部減衰がある.脂肪の沈着によって減衰が大きくなることは一般的に知られているが,その定量的な評価法は確立されていない.我々は,エコー信号の減衰の周波数特性に着目し,超音波診断装置を用いて複数の周波数を用いて取得した肝エコー信号から減衰率を算出し,その結果と病理学的に評価された脂肪量とを比較することで,エコーによる肝脂肪量の定量評価を試みた.
【方法】
エコー信号の深度方向における減衰を評価するためには,①使用する診断装置やプローブ固有の音場特性,②生体による減衰の2つを切り分ける必要がある.そこで,あらかじめ減衰率の既知な複数のターゲットファントムを用いて各種の送受信条件における音場特性を計測し,その結果を減衰率を算出したい対象のエコー信号に掛け合わせることで音場の影響を除し,生体依存の特性のみが反映されたエコー信号とし,それらのエコー信号から減衰率を算出する.基礎検討として,人体の音響特性に近い寒天グラファイトファントム(正常肝ファントム)と牛脂を混入したファントム(脂肪肝ファントム)を作製し,超音波診断装置(XarioTM,東芝メディカルシステムズ)およびコンベックスプローブ(PVM-375AT,東芝メディカルシステムズ)を使用して,送受信周波数を1.9,2.8,4.0,5.0,6.0 MHzの5種類でエコー信号を取得し,前述の方法で減衰率を算出した.また,脂肪量の異なる臨床データ8症例を同様の条件で取得し(診断装置はAplioXGTM,東芝メディカルシステムズを使用),各々について各周波数における減衰率を算出した.
【結果と考察】
ファントム実験の結果であるFig.1において,正常肝ファントムでは減衰率が周波数によらずほぼ一定の値を示しており,一般に知られている均質媒質における減衰定数の概念と一致している.一方で,脂肪肝ファントムでは送受信周波数の変化と共に減衰率が変化していることが確認できる.同様に,臨床データの解析結果であるFig2においても,脂肪量が少ない症例では周波数間の減衰率の差異が小さく,脂肪量が増加するにつれて周波数間の減衰率の差が増加する傾向が確認できることから,音場の影響を考慮して複数周波数のエコー信号から減衰率を算出することによって,脂肪肝を定量評価することについての可能性が示された.