Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
基礎:イメージング3

(S327)

変調波を送波に用いる広帯域ドプラ法

Wideband Doppler method using modulated transmission signal

田中 直彦

Naohiko TANAKA

芝浦工業大学システム理工学部

College of Systems Engineering and Science, Shibaura Institute of Technology

キーワード :

【はじめに】
生体内の血流速を可視化する超音波ドプラ診断装置は,様々な領域の診断に広く利用されている.しかし従来の方法では,高速血流を観測したときに生じるエイリアシングの問題があり,ドプラ情報の利用を制約する要因となってきた.そこで,広帯域の超音波パルスを送受波し広い範囲の血流速を推定する広帯域ドプラ法を提案し,ナイキスト限界の2倍を超える流れについて,エイリアシングのないカラーフロー画像が生成できることを報告してきた.
これまでの検討では,送波パルス長を短くすることで送波帯域を広くしていた.しかしこの手法で受波のS/Nを維持するには,送波パルス振幅を大きくする必要があり,MIの観点では望ましい方法とは言えない.そこでチャープ波などの変調波を送波に用いることで,低MIの広帯域ドプラ法を実現する方法について検討した.
【方法】
短パルス送波を用いる広帯域ドプラ法では,受波はレンジゲートで切り出されフーリエ変換される.変調波を用いる場合は,レンジゲートの前段でパルス圧縮処理を行う.この場合,複素化した送波信号を参照信号として,複素相互相関によりパルス圧縮を行う方法により,良い結果が得られた.この実際の処理は,計算量削減のために周波数領域で行う.すなわち,受波信号と参照信号をフーリエ変換し,この両者からクロススペクトルを求め,帯域確保のための振幅補正の後にフーリエ逆変換する.こうしてパルス圧縮された信号にレンジゲートを適用する.以後の処理は,パルス送波の場合の広帯域ドプラ法と同じである.
【結果】
振幅スペクトルの等しいパルス波とチャープ波を用い,多数散乱体モデルでそれぞれの場合の受波信号を生成し,速度推定のシミュレーションを行った.中心周波数は3MHz,送波振幅スペクトルの半値幅は2.5MHz,チャープ波の信号長200μs,S/Nは-6dBである.Fig.1 に示すように,チャープ送波による方法の方がパルス送波の場合よりも,雑音の影響が少ない速度推定が出来ている.
【まとめ】
低MIでエイリアシングのない血流イメージングを実現するための,変調波を送波に用いる広帯域ドプラ法について検討している.計算機シミュレーションにより,良好なロバスト性を有する血流速推定が実現できる見通しを得た.