Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
基礎:安全性とプローブ

(S319)

地域産学連携による高周波数アレイ型超音波プローブの開発

Development of high frequency array transducer by regional university-industry collaboration

西條 芳文1, 長岡 亮1, 田村 清志2, 菊地 清2, 井口 真仁3, 遠藤 俊行3, 小林 和人4, 大森 健児4

Yoshifumi SAIJO1, Ryo NAGAOKA1, Kiyoshi TAMURA2, Kiyoshi KIKUCHI2, Mabito IGUCHI3, Toshiyuki ENDO3, Kazuto KOBAYASHI4, Kenji OMORI4

1東北大学医工学研究科 医用イメージング研究分野, 2ケイテック株式会社事業推進室, 3株式会社日本セラテック開発部, 4本多電子株式会社メディカル事業部

1Biomedical Imaging Laboratory, Graduate School of Biomedical Enginering, Tohoku University, 2R&D Division, Keitech Co. Ltd., 3R&D Division, Nihon Ceratec Co. Ltd., 4Medical Division, Honda Electronics Co. Ltd.

キーワード :

【目的】
高齢化社会を迎え,脳,毛髪と並ぶ「三大エイジング」の一つである皮膚のエイジングに大きな注目が注がれている.われわれは,中心周波数100 MHzのPVDF製シングルトランスデューサの機械的走査による三次元超音波顕微鏡を開発し,ヒト皮膚の微細構造を明らかにし,本学会でも報告を行っている.三次元超音波顕微鏡は据え置き型で大きいため,機械走査機構にユニモルフ素子を採用したプローブの小型化は既に行ったが,超音波診断装置の臨床的特長のひとつである簡便な操作のためには電子走査方式を採用した高周波数プローブの開発が必要である.本研究では,従来,医療機器開発に直接関係していなかった地域企業の特性を生かした新たな産学連携により,高周波数アレイ型超音波プローブを開発することを目的とし,国際的に競争力のある医療機器産業の創出を目指すことをプロジェクトの最終的な目標とする.
【方法】
まず,13mm×13mm厚み50ミクロンの圧電セラミックスに対して,スクリーン印刷機により電極のパターン印刷を行う.また,短冊状にカットした素材について,超音波信号特性評価を行い,適切なセラミックス素材の選択を行う.次にレーザー加工および電極の微細加工によりアレイ型振動子を作製し,この振動子の音場計測を行う.一方,高周波数用多チャンネルA/Dコンバータの開発と,皮膚に最適な超音波イメージプロセッシングのアルゴリズムの開発を並行して行う.
【結果および考察】
本プロジェクトにより,圧電セラミックス素子の厚さ50ミクロン,振動子ピッチ500ミクロン,16チャンネルのアレイ型超音波プローブの作製が可能であった.整合層をつけない状態で,ピーク周波数33MHzの信号を得ることができ,アレイ部分もほぼ均一な音場分布を示していた.A/Dコンバータに関しては200MHzサンプリングが可能な装置の設計が完了し,皮膚に最適なイメージプロセッシング条件の設定や,平行波の送信による超高速イメージングのアルゴリズムも完成した.現在,30MHz以上の周波数帯域を持つアレイ型超音波プローブは,VisualSonics社から市販されている動物実験用の機器しかなく,本研究が医療機器に応用できた場合には,国際的にも独自の市場を開拓できると考えられる.また,消化管内視鏡や血管内超音波などのメーカーにOEM供給することにより,本研究グループだけでは開発することのできない新しい医療機器の創出が期待される.
【結語】
地域産学連携により,高周波数アレイ型超音波プローブの開発に成功した.本プロジェクトは平成22〜23年度経済産業省地域イノベーション創出事業によって行われたものでありここに謝意を表する.