Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
基礎:治療応用2

(S318)

マイクロバブル援用超音波遺伝子導入法での照射条件による遺伝子導入効率の比較

Efficacy Improvement of Microbubble-Enhanced Sonopolation by Changing Transmit Condition

佐々木 明1, 岡本 旭生1, Yiwei Zhang3, 葭仲 潔2, 高木 周1, 3, 鄭 雄一3, 松本 洋一郎1

Akira SASAKI1, Akio OKAMOTO1, Yiwei ZHANG3, Kiyoshi YOSHINAKA2, Shu TAKAGI1, 3, Yuichi TEI3, Yoichiro MATSUMOTO1

1東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻, 2(独)産業技術総合研究所ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 3東京大学大学院バイオエンジニアリング専攻

1Department of Mechanical Engineering, The University of Tokyo, 2Human Technology Research Institute, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 3Department of Bioengineering, The University of Tokyo

キーワード :

【はじめに】
遺伝子治療とは,異常遺伝子を持つ細胞に対して新たに遺伝子を導入し,細胞の機能を正常化することで病気を治療する方法である.現在,超音波を用いた遺伝子導入法が,低侵襲かつ副作用が少ないため着目されている.本導入法は,超音波照射により細胞膜に一時的に小孔を物理的に生じさせることで遺伝子導入を実現させる手法であるが,マイクロバブルの援用により導入の効率が向上するという知見がある[1].しかし超音波照射により生じるマイクロバブルの振動・崩壊という現象の詳細な機序は不明である[2].また,導入効率が他手法に比べ0.1%程度と低いという問題がある[3].本研究は効率的に遺伝子を導入するため,超音波照射条件の最適化を行うことによりマイクロバブルの細胞に対する寄与を増大させることを目的として実験を行った.
【実験方法】
細胞培養液としてのD-MEMに,血清であるFBSを10%,抗生物質PSを1%加えたものを用いた.細胞培養液のウェル内の細胞培養液に導入遺伝子(GFPプラスミド)とマイクロバブルを混和し,平板振動子(2MHz)を上方より照射した.なお,遺伝子濃度を15μg/ml,マイクロバブル数密度を1.7×105/mm3で行った.上記条件下での細胞への導入率,生存率を計測するために,バースト波数とデューティサイクルをパラメータとして変化させ計測を行った.バースト波により一定時間の照射と休止時間を設け,Isptaを5.0W/cm2を一定にした.パラメータとしてバースト波数を10,100,1000とし,トータルパワーを一定とするために,全照射時間を変化させてそれぞれ対し110s,20s,110sとした.また,Duty比を一定とした実験を行った.その条件は,PRFを50,500,5,000Hz と変化させ全照射時間を60s一定とした.GFPプラスミドが導入された細胞は細胞内で緑色タンパク質(GFP)が生成される.ピークに達する48時間後にフローサイトメトリにより遺伝子導入率の測定を行った.
【結果とその検討】
照射休止時間をパラメータとした実験では,休止時間の増加に伴い遺伝子導入,細胞生存率の向上が確認された.これは,十分な照射休止時間を設けることで細胞へのダメージが抑制されたため,小孔が生じ遺伝子が導入された細胞が生存できるようになったことに起因すると考察される.一方,PRFをパラメータとした結果は,PRFを低くする程遺伝子導入率が高かった.PRFを低くすると照射時間,休止時間共に長くなるためで,この結果は先の照射時間と休止時間による時間依存性を示していることと一致した結果である.
【謝辞】
本研究の一部はシステム疾患生命科学による先端医療技術開発拠点(TSBMI)の支援を受けて実施した物である.
【参考文献】
[1]Hirayama K et.all.,Proc.of 6th ISTU, 2006
[2]Okada K et.all.,“A Basic Study on Sonopolation with Mictobubbles Exposed to Pulsed Ultrasound” J Med Ultrasonics, Vol.32 pp3~11 2005
[3]Tachibana R et.all., Proc.of 9th ISTU, 2009