Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
基礎:治療応用2

(S317)

2種類の前立腺がん細胞におけるソノポレーションによる抗がん剤の効果増強

Enhancement of anti cancer drug cytotoxicity by sonoporation in two types of prostate cancer

松井 智子, 工藤 信樹

Tomoko MATSUI, Nobuki KUDO

北海道大学 大学院情報科学研究科生命人間情報科学専攻

Division of Bioengineering and Bioinformatics, Graduate School of Information Science and Technology, Hokkaido University

キーワード :

【はじめに】
我々は,パルス超音波と微小気泡を用いたソノポレーションに関する検討を行っている.これまで,集束型超音波振動子を用いて2種類の前立腺がん細胞PC-3とLNCaPにおける抗がん剤の効果増強の比較を行ってきた.しかし,集束型振動子の音場は焦点領域が狭く強度の不均一性も高いため得られるデータにばらつきが大きく,細胞種による差を明確にできなかった.そこで本研究では,より均一な音場を発生する平面型振動子を用いて検討を行った.
【方法】
実験には中心周波数1 MHzの平面型超音波振動子(最大負圧0.3 MHz)を用いた.集束型超音波振動子(波数3波,最大負圧1.1 MHz)より音圧が低いため,波数を3,15,30と変化させて細胞膜の損傷率を調べた.
気泡を付加し超音波を照射する条件(USMB),抗がん剤Oxaliplatinを添加する条件(OX)を組み合わせてアポトーシスの発生率を調べた.細胞を培養したディッシュに9 mlの Hanks緩衝液を満たしてパラフィルムで密閉し,上下を反転させて平面振動子上に置いて超音波を照射した.USMBの条件ではLevovistを1.1 mg/mlの濃度で加え,浮力により気泡を細胞に接着させた.OXの条件ではOxaliplatinは100 μMの濃度となるように加え,超音波照射1時間後に抗がん剤を含まない培地と交換した.すべての試料は,実験開始から6時間インキュベーターで培養した後に蛍光試薬Hoechst33342を用いて染色し,核の凝縮や断片化からアポトーシスの発生を判断した.
【結果および検討】
照射する超音波の波数(burst数)を3,15,30波とした場合の細胞膜損傷率はそれぞれ6,18,53 %であったので,集束型振動子を用いた際の平均損傷率20 %に近い3,15波で実験を行った.各条件でアポトーシス発生率を調べた結果をFig. 1に示す.OX単独の条件ではアポトーシス発生率に増加は見られなかったが,USMB単独の条件では波数15の場合に増加が見られた.PC-3ではUSMBとUSMB+OXの条件間に有意な差が見られなかったが,LNCaPではUSMBとOXの組み合わせによりアポトーシスの発生率に増加の傾向が見られ,細胞種による違いを確認できた.今後はサンプル数を増やし,得られた結果をより確実にしていく予定である.
本研究の一部は文科省科研費(基礎研究(A)20240053)により行われた.