Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
基礎:治療応用2

(S317)

細胞の培養状態がソノポレーションの効率に与える影響に関する検討

A study on effects of cell culture conditions on the efficacy of sonoporation

木下 勇人, 工藤 信樹

Yuto KINOSHITA, Nobuki KUDO

北海道大学大学院情報科学研究科生命人間情報科学専攻

Division of Bioengineering and Bioinformatics, Graduate School of Information Science and Technology, Hokkaido University

キーワード :

【目的】
 これまで,接着細胞に対するソノポレーション実験は,ガラスやプラスチックなど硬い物体上に培養した細胞を対象に行われてきた.しかし,一般に生体内では細胞は柔軟な物体上に存在するため,より生体に近い条件でのソノポレーション研究が重要と考えられる.そこで本研究では,カバーガラス上に作製したアクリルアミドゲル層の上に細胞を培養する方法について検討するとともに,本条件で培養した細胞にソノポレーションを行い細胞の変化を調べた.
【方法】
 架橋剤を加えた5 %濃度のアクリルアミド溶液をカバーガラス上に10 μl滴下し,アルミホイル(11 μm厚)をスペーサとしてもう一枚のカバーガラスを押しつけることにより,厚さ15~60 μm程度の平坦なゲル層を作製した.その後,このゲル上に定法によって細胞培養を行い,パルス超音波と微小気泡を用いたソノポレーションを行った.細胞にはヒト前立腺がん細胞(PC-3)を用い,ゲル上に培養した細胞と,カバーガラス上に培養した細胞で細胞膜損傷の発生を調べた.観察チャンバの内部にはPI (propidium iodide)と5 mg/mlのLevovistを加えた培養液を満たし,気泡と細胞が接触した状態で,中心周波数1 MHz,最大負圧1.1 MPaのパルス超音波を一回のみ照射した.
【結果・検討】
 Fig. 1にゲル上(a,b)およびカバーガラス上(c,d)に培養した細胞の微分干渉像とPI像を示す.微分干渉像では,(c)カバーガラス上の細胞は仮足を伸ばし十分薄く広がっているのに対し,(a)ゲル上の細胞は球形に近い形にとどまるものが多く見られた.また,ソノポレーションによる細胞膜の損傷を表すPI像では,(d)カバーガラス上に培養した条件で,多くの細胞に蛍光が見られたのに対し,(b)ゲル上の細胞でも蛍光は認められたものの,その強度は低かった.特に(d)では,白矢頭で示したように非常に強い蛍光を示す細胞が見られ,ソノポレーションによる損傷が修復されなかった細胞と考えられた.このようにソノポレーションの効果に大きな差が見られたことから,細胞の培養状態に関する検討はin vivoソノポレーション研究において重要と考えられた.
 本研究の一部は文科省科研費(基盤研究(A)20240053)により行われた.