Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
基礎:治療応用2

(S316)

ソノポレーション基礎研究のための光ピンセットを用いた微小気泡位置制御装置の開発

Development of a bubble-trapping system using optical tweezers for basic studies of sonoporation.

奥山 学, 工藤 信樹, 清水 孝一

Manabu OKUYAMA, Nobuki KUDO, Koichi SHIMIZU

北海道大学大学院情報科学研究科生命人間情報科学専攻

Division of Bioengineering and Bioinformatics, Graduate School of Information Science and Technology, Hokkaido University

キーワード :

【はじめに】
 我々は,パルス超音波と微小気泡を用いたソノポレーションに関する検討を行っている.本手法では,微小気泡の付着した部位に細胞膜の損傷を生じさせることができる.そのため,微小気泡の付着位置や大きさを変えて,膜損傷の程度や薬剤などの導入量を制御できればソノポレーションの基礎研究に有用である.そこで我々は,2本の光ピンセットビームを用いて微小気泡の位置制御を試みてきた.しかし,屈折率が周囲の水よりも小さい気泡の位置を光の排斥力のみで制御することは難しかった.そこで,これまでの単純な平行ビームをラゲールガウスビーム(ドーナツ型ビーム)に変更し,気泡の捕捉を実現する実験システムを開発した.このシステムを用いて微小気泡を制御したソノポレーションを行って細胞の損傷の程度を観察した.
【方法】
 波長1064 nmのレーザ(YLM-2-1064-LP,IPG LASER)のファイバ端から出力された光をレンズにより平行ビームとし,空間光位相変調器(LCOS-SLM X10468-03,浜松ホトニクス)の液晶部に入射した.液晶に表示したホログラムによって位相のみを変調した反射光を倒立型顕微鏡(ECLIPSE Ti,ニコン)に導入し,対物レンズ(倍率20倍)で結像させることにより,観察点にドーナツ型の光ピンセットビームを作成した.作成した光ピンセットを用いてカバーガラス上に培養したヒト前立腺がん細胞(PC-3)の付近で微小気泡の位置を制御し,ソノポレーションを行った.微小気泡としては自作のアルブミンのシェルを持つ気泡を用いた.
【結果および検討】
 光ピンセットによる捕捉力は気泡半径の2乗に比例することが知られている(高比良ら,機学論 67(654) 132-139)が,ソノポレーションに使用される最小1 μm程度の気泡も容易に補足でき,細胞質,核上に移動できることを確認した.一例をFig. 1に示す.(a)直径約1 μmのアルブミンバブルを光ピンセットで捕捉し,(b)細胞質上に移動させ,補足した状態でパルス超音波を照射した.(c)微小気泡とパルス超音波によって気泡付着部位に損傷が起きる様子が観察でき,光ピンセットで捕捉した気泡で細胞膜に穿孔を生じさせることが確認できた.
 本研究の一部は文科省科研費(基盤研究(A) 20240053)により行われた.