Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
基礎:治療応用1

(S315)

酸化チタン複合体への集束超音波照射による抗感染性発現の評価

Evaluation of Anti-infective Effect by Focused Ultrasound Irradiation on Titanium Dioxide Composite

新田 尚隆1, 賀谷 彰夫1, 山根 隆志1, 兵藤 行志1, 古薗 勉2

Naotaka NITTA1, Akio KAYA1, Takashi YAMANE1, Koji HYODO1, Tsutomu FURUZONO2

1(独)産業技術総合研究所ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 2近畿大学生物理工学部

1Human Technology Research Institute, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST), 2Faculty of Biology-Oriented Science and Technology, KINKI University

キーワード :

【目的】
酸化チタンへの紫外線照射による光触媒効果は,環境分野における有害物質除去等に利用されているが,紫外線以外の励起源として超音波の利用が注目されており,数十kHzの低周波超音波照射による殺菌効果が知られている.一方,医療分野では体内留置カテーテル等の出口部においてトンネル感染防止対策が望まれている.このため,我々は,生体親和性を付与すべくアミノ化した酸化チタンナノ粒子を基材表面に共有結合させた酸化チタン複合体をカテーテル等の出口部を被覆し,そこに低強度の集束超音波を照射して局所的にOHラジカルを発生させ,抗感染効果を発現させる方法を検討している.本研究では,酸化チタン複合体への集束超音波照射による抗感染性発現の基礎的な検討として,サリチル酸トラップ法によるOHラジカル生成評価を行ったので報告する.
【方法】
図1のような実験システムを構築した.試料水槽底面に,アミノ化ナノ酸化チタン複合体シート及びそのコントロールとして酸化チタン粒子を結合しないシリコンシートを貼り付けた.試料水槽内には0.1mMサリチル酸水溶液10mLを入れ,底面シート位置に超音波焦点を置き,連続波で60分間超音波照射(0.5 MHz)を行った.連続波照射による生体安全限界を1W/cm2とし,安全限界内(0.6W/cm2)の出力強度で超音波照射を行った.超音波照射後のサリチル酸水溶液は冷凍保存後解凍し,解凍後溶液に対して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を行い,OHラジカル発生によるDHBA生成量を評価した.
【結果】
図2は,安全限界内である0.6W/cm2の強度で超音波照射を行ったときのクロマトグラム例であり,US(+)AmTiO2(-)ではDHBAの生成が何ら見られないのに対し,US(+)AmTiO2(+)ではDHBA生成を示すピークが生じ,OHラジカル生成が確認された.これは,実際の応用において生体安全性を満たす低レベルの超音波出力を用いた場合,酸化チタンを含む領域でのみOHラジカルが生じ,抗感染効果が発現することを示唆していると考えられる.
【結語】
酸化チタン複合体への低強度集束超音波照射を行い,OHラジカル生成が確認された.今後は,より効率的な照射条件等についても検討してゆく.
【文献】
1)N. Nitta et al., JJAP, Vol.49(7), pp.07HF24-1-7, 2010.