Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
基礎:治療応用1

(S314)

集束超音波を用いた下肢静脈瘤治療法における照射手法の最適化

Development of HIFU treatment for lower extremity varicose veins

佐々木 明1, 妹尾 直彦2, 鈴木 潤4, 葭仲 潔3, 出口 順夫4, 高木 周1, 2, 宮田 哲郎4, 松本 洋一郎1, 2

Akira SASAKI1, Naohiko SENOO2, Jun SUZUKI4, Kiyoshi YOSHINAKA3, Juno DEGUCHI4, Shu TAKAGI1, 2, Tetsuro MIYATA4, Yoichiro MATSUMOTO1, 2

1東京大学大学院工学系研究科 機械工学専攻, 2東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻, 3(独)産業技術総合研究所治療支援技術グループ, 4東京大学医学部血管外科

1Department of Mechanical Engineering, The University Tokyo, 2Department of Bioengineering, The University Tokyo, 3Surgical Assist Technology Group, The National Institute of Advanced Industrial, 4Division of Vascular Surgery, Department of Surgery, The University Tokyo

キーワード :

【はじめに】
下肢静脈瘤とは,下肢の静脈の弁が壊れることにより血管が拡張し蛇行する病気である.下肢静脈瘤の罹患により,血管が浮き出ることによる整容的問題がある上,脚に慢性的な痒みや痛み,だるさを感じるようになる.この病気に対する現行の治療法のうち根治的なものは,すべて切開を必要とするため,侵襲性が高いという問題がある.そこで静脈瘤のできた血管を集束超音波によって加熱し,内膜の変性と血管壁の収縮を起させて閉塞させることで,非侵襲的に治療する手法が考えられている[1].先行研究では,集束超音波によってウサギの外頸静脈を閉塞させることに成功したが,その成功率は低く(10 例中1 例),血管の全域に超音波照射を行っても,一部分しか閉塞されないという問題があった.そこで本研究では,集束超音波による血管閉塞の成功確率を向上させ,より臨床応用可能なレベルに近づけることを目的として,課題検討および実験を行い,成功率の向上を図った.
【実験方法】
前年度までの成功率の低さは,集束超音波の焦点と血管との位置合わせ精度の低さに原因があると考えられた.そこで本研究では,前装置で用いていた深部観察用のセクタ(2.5MHz)を表在観察用のリニア(7.5MHz)に変更し,ROIでの分解能向上を図った.解像度はセクタに対して,リニアでは方位分解能で2.5倍ほど改善された.動物実験に際しては,ウサギ皮膚表面において超音波伝播を阻害する要素を排除するため,脱毛処理など適切な皮膚処理を施した上で照射を行った.また,照射時には,血流による熱散逸を抑えるため,ウサギ血管は圧迫状態とした[2].さらに,皮膚表面の熱傷防止のため,ヒアルロン酸の皮下注射により皮膚と血管の距離を7mm以上に保った上で,照射を行った[3].照射条件のパラメータは,750W/cm2×20S,900W/cm2×20S,1050W/cm2×10S,1300W/cm2×5S,1300W/cm2×10Sの5群とし,ウサギ左外頚静脈に約20か所の照射を実施し,血管の焼灼度と皮膚表面の火傷状況の確認を行った.
【結果とその検討】
モニタリング画像の改良により,照射位置精度の向上が得られ,血管閉塞の成功確率を改善させることに成功した.長時間照射に比べ,超音波強度を強くした短時間照射が,血管閉塞確率・皮膚熱傷回避確率に関して良好な結果が得られる傾向であった.しかし,高強度で5s照射の場合では,短時間過ぎるためか焼灼の安定度の問題や皮膚火傷の問題が起った.ウサギを使った実験では,皮膚の状態など安定した照射を阻害する個体差が多く存在したため,安定した結果が得られ難かった.本結果に基づき,今後はBSAゲル等を用いて,超音波照射条件の最適化,超音波照射用Txの形状の最適化を図ることで,より低侵襲な治療を実現することが必要と思われた.
【謝辞】
本研究の一部はシステム疾患生命科学による先端医療技術開発拠点(TSBMI)の支援を受けて実施した物である.
【参考文献】
[1]Samuel P., Rene M., et al., In vitro experimental study on the treatment of superficial venous insufficiency with High Intensity Focused Ultrasound, 2006, Ultrason. in Med. & Biol., vol. 32, 883-891
[2]Ota R et.all., Proc.of 8th ISTU, 2008
[3]Senoo N et.all., Proc.of 10th ISTU, 2010