Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
基礎:弾性計測

(S312)

マルチスペクトラム同時加振によるずり弾性波映像化

Shear elastic wave imaging by multi-spectrum simultaneous excitation

吉原 由貴, 冨沢 良介, Raj Kumar Parajuli, 三輪 空司, 山越 芳樹

Yuki YOSHIHARA, Ryousuke TOMIZAWA, Raj Kumar PARAJULI, Takashi MIWA, Yoshiki YAMAKOSHI

群馬大学大学院工学研究科電気電子工学専攻

Department of Electronic Engineering, Graduate School of Gunma University, Faculty of Engineering

キーワード :

【目的】
生体内部の粘弾性特性を定量評価する方法として,生体組織内を伝わるずり弾性波を用いる方法が知られている.しかし,境界面からの反射による定在波の発生や生体組織の複雑な速度構造による弾性波の三次元的な伝播方向の変化などが定量化の課題となる.これらは複数の周波数で評価することにより定量性が向上すると考えられる.さらに共振現象や分散性といった複雑な媒質の伝播特性は周波数依存性を計測することで評価できる.そこで,本稿では複数周波数の同時励振によるずり弾性波の映像化を提案する.
【方法】
複数周波数で同時にずり弾性波を励振すると媒質の弾性特性の非線形性や加振器自体の非線形性等により基本周波数,二次高調波,和・差周波数など複数のずり弾性波が同時に励起され,異なる伝播特性で媒質内を伝播する.これら複数波動を同時に評価することで分散性,伝播方向依存性,非線形性など多くの特徴パラメータが得られる.これを実現するには計測データから複数の波動を分離することが必要になるが,ここでは加振波のドプラ計測より加振周波数における複素変位を推定し,二次元複素変位を得た後,波数ベクトル空間フィルターによる複数波動の分離を行った.
【実験】
グラファイト粉末を超音波散乱体とした寒天ファントムを用いて手法の評価を行った.寒天ファントムは上部の寒天濃度1.0%,下部の濃度1.5%の二層寒天を用いた.ファントムの表面に球形状の加振体を置き周波数400Hzと500Hzで同時加振し,超音波パルスドプラ計測を行った.4つの円形超音波振動子(直径5mm)を並列に配置し,これを機械的に走査することで3次元計測を行った.波数ベクトル空間フィルターにより同じ周波数を持つ複数波動の分離を行い波動ごとの映像を得た.図(a)と図(b)は,400Hzと500Hzを同時励振したときの和周波数900Hzのずり弾性波の位相と,単一周波数900Hzで加振した場合の位相である.両者が酷似していることから和周波数のずり弾性波の映像化が本手法で可能になることが確認できる.同様に高調波,差周波数のずり弾性波も反射波などを伴いながら伝播していることが確認できた.
【結論】
連続的な加振によっても複数周波数を同時に加え,データ収集後に基本波,高調波,和,差周波数などの波動を個々に解析することで,ずり弾性波の新たな映像法が実現できる.