Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
基礎:気泡

(S309)

ソノポレーションにおける超音波照射シーケンスの検討

Evaluation of Ultrasonic Irradiation Sequence in Sonopolation

郡 裕路

Hiromichi KOHRI

群馬大学大学院工学研究科電気電子工学専攻

Department of Electronic Engineering, Graduate School of Gunma University, Faculty of Engineering

キーワード :

【目的】
気泡キャビテーションにより細胞膜に微小な穴を穿つソノポレーションは,超音波支援ドラッグデリバリシステムの重要な技術と考えられる.しかしそのメカニズムは不明な点も多い.また微小窪みの空間分布や密度だけでなく微小窪みの直径や深さをも制御できることが必要と考えられるが,現状では微小窪みの量や質を制御できるまでには至っていない.本稿では,微小気泡として超音波造影剤気泡を,血管を模擬したファントムとしてNIPAゲルを用いて,開口制限光学系による流路内での気泡軌跡観察と共焦点レーザー顕微鏡による流路壁面に形成された微小窪み観察を評価法として用い,ソノポレーションにおける超音波照射シーケンスを検討した.
【実験方法】
ポンピング超音波と呼ぶ音響放射圧を気泡に与えることができるが気泡を破壊しない超音波を用いて,気泡集合化や気泡の壁面への付着状態を制御し(気泡のプリトラッピング),この後,音圧の高い気泡破壊用超音波を照射して気泡キャビテーションによる微小窪みを流路壁面に形成させた.開口制限光学系は観察用の顕微鏡の対物レンズに光軸の中心部分を遮断する開口制限を設け,気泡が焦点ずれ位置にあるときのドーナツ状パターンから気泡の深さ方向の位置を計測する方法で,この方法によりポンピング超音波照射時の気泡の3次元的位置と気泡集合化を評価する.一方,流路壁面の微小窪みの大きさと深さを評価するために水浸対物レンズを用いた共焦点レーザー顕微鏡を用いた.
【結果】
ポンピング超音波として単一周波数(周波数2.5MHz,音圧100kPa)の場合と,周波数掃引(周波数2.95MHzから2.35MHz,周期0.25秒)を用いた場合の結果を図に示す.気泡破壊用超音波は音圧2MPa,バースト長100,バースト繰り返し数20である.単一周波数(図1-a,図1-b)に比較して,周波数掃引(図2-a,図2-b)を行うと,プリトラッピング気泡群およびキャビテーション後に形成される微小窪みそれぞれの空間分布の一様性が高くなることが確認できた.
【結論】
流路壁面に形成される微小窪みの量と質の評価を行い最適な超音波照射シーケンスを探索することは,ソノポレーション技術の有効性の改善のために重要である.今回,2つの観測手法を新たに導入し実験を行ったが,照射シーケンスにより微小穴の量だけでなく質も大きく影響を受けることが確認された.