Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

奨励賞演題:体表

(S302)

Sonzoid造影超音波検査による乳癌術前化学療法効果判定の検討

Evaluation of Neoadjuvant Chemotherapy in Breast Cancer by Contrast-Enhanced Ultrasound using Sonazoid

三塚 幸夫1, 金澤 真作2, 丸山 憲一1, 八鍬 恒芳1, 緒方 秀昭2, 馬越 俊輔2, 齊藤 芙美2, 根本 哲生3, 澁谷 和俊3, 金子 弘真2

Yukio MITSUZUKA1, Shinsaku KANAZAWA2, Kenichi MARUYAMA1, Tsuneyoshi YAKUWA1, Hideaki OGATA2, Shunsuke MAGOSHI2, Fumi SAITO2, Tetsuo NEMOTO3, Kazutoshi SHIBUYA3, Hironori KANEKO2

1東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部, 2東邦大学一般・消化器外科, 3東邦大学医療センター大森病院病院病理部

1Department of Clinical Functional Physiology, Toho University Omori Medical Center, 2Department of Surgery (Omori), Division of General and Gastroenterological Surgery, Toho University, 3Department of Pathology, Toho University Omori Medical Center

キーワード :

【背景・目的】
 乳癌の治療においてしばしば術前化学療法(以下,NAC)が行われている.NACにより腫瘍を縮小させることで,手術不可能な進行乳癌の手術や乳房全摘の適応となる症例の温存手術が可能となるケースがある.また腫瘍の抗癌剤に対する感受性を調べることや,全身治療を先行させることで予後改善も期待されている.NACの臨床的効果はRECIST GUIDE LINE に基づいて腫瘍の最大径で評価されるが,時として腫瘤が残存していても腫瘍がほぼ消失しているケースもみられる.そこで我々は倫理委員会承認のもとSonazoid造影超音波検査(以下,CEUS)を行い,より正確な効果判定や効果予測が可能であるか検討している.今回,組織学的効果判定と比較することで,どのようなCEUS所見に注目すべきか検討を行ったので報告する.
【対象】
 2007年7月から2010年7月の3年間にNACを施行した症例のうち,NAC前後およびNAC中に計3回以上CEUSを行い,術後に組織学的効果判定が行われた20症例22結節を対象とした.年齢は34歳から67歳(平均48.2歳),全例女性で,組織型はPapillotublar carcinoma:8結節,Scirrhous carcinoma:7結節,Solid-tubular carcinoma:7結節である.なお,NACは全例FEC100+DOCを施行したが,腫瘍の増大やアレルギーによりNACを中断した症例が含まれている.
【方法】
 Sonazoidは肝に対する推奨投与量(0.015ml/kg)の半量を静脈内投与し,必要に応じてre-injectionを行った.超音波診断装置はAplio XG(東芝メディカルシステムズ社製),プローブはPLT-805AT(中心周波数8MHz,周波数帯域5~12MHz)を使用した.CEUSはNAC前後とNAC中1~2回の計3回ないし4回施行し,(1) 腫瘤内部染影,(2) 腫瘤周囲染影,(3) 腫瘤内部不染域の3項目に関して評価を行った.腫瘤内部染影は,E-0:染影なし,E-1:非腫瘍部と同程度の染影,E-2:非腫瘍部よりやや強い染影,E-3:非腫瘍部より明らかに強い染影,E-non:評価不能の5段階に,腫瘤周囲染影および腫瘤内部不染域は,あり,なし,評価不能の3段階に分類した.組織学的効果判定は乳癌取扱い規約に則ってGrade 0,1a,1b,2a,2b,3に分類し,Grade 0群,Grade 1群(1a+1b), Grade 2群(2a+2b), Grade3群の4群にわけてCEUS所見を検討した.
【結果】
 組織学的効果判定では,Grade 0群:0結節,Grade 1群:16結節(1a:10結節,1b:6結節),Grade 2群:4結節(2a:4結節,2b:0結節),Grade3群:2結節であった.(1) 腫瘤内部染影:NAC前,E-2が8結節に,E-3が14結節に,E-nonが1結節にみられた.E-0およびE-1はみられなかった.NAC後,Grade 3群では2結節ともE-1を示し,Grade 2群では4結節中3結節でE-1を,1結節でE-3を示した.Grade 1群では16結節中9結節でE-2を,6結節でE-3を,1結節でE-nonを示し,腫瘤内部染影が残存していた.(2) 腫瘤周囲染影:Grade 3群2結節中1結節はNAC前に周囲染影を認めたがNAC後に周囲染影消失し,もう1結節はNAC前後とも周囲染影はみられなかった.Grade 2群4結節にNAC前またはNAC中に認めた周囲染影は,3結節でNAC後に消失,1結節で残存した.Grade 1群16結節中6結節でみられた周囲染影は,NAC後1結節のみ消失し,4結節で残存した.またNAC前に周囲染影のみられなかった1結節では,NAC後に周囲染影が出現した.(3) 腫瘤内部の不染域:NAC前後で一定の傾向はみられなかった.
【結論】
 組織学的に治療効果のみられた結節では,NAC後に腫瘤内部および周囲の染影が低下する傾向がみられた.CEUSにより腫瘤内部と周囲の染影を評価することで,NACの効果を評価できる可能性が示唆された.