Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

奨励賞演題:泌尿器超音

(S301)

NSAIDが腎血流に及ぼす影響-造影超音波による評価-

Effect of NSAID on renal perfusion-Evaluation by contrast-enhanced ultrasound-

飯田 あい1, 今村 祐志1, 神崎 智子2, 筒井 英明2, 眞部 紀明1, 鎌田 智有2, 楠 裕明3, 畠 二郎1, 春間 賢2

Ai IIDA1, Hiroshi IMAMURA1, Tomoko KANZAKI2, Hideaki TSUTSUI2, Noriaki MANABE1, Tomoari KAMATA2, Hiroaki KUSUNOKI3, Jiro HATA1, Ken HARUMA2

1川崎医科大学検査診断学, 2川崎医科大学消化管内科学, 3川崎医科大学総合診療部

1Department of Clinical Pathology and Laboratory, Kawasaki Medical School, 2Division of Gastroenterology, Department of Internal Medicine, Kawasaki Medical School, 3Department of General Medicine, Kawasaki Medical School

キーワード :

【背景】
腎血流測定はパラアミノ馬尿酸を用いたクリアランス試験,放射線物質を用いたレノグラムなどにより行われるが,技術的困難あるいは被曝などの問題がある.近年,CT,MRI,PETなどによる腎血流評価の報告もみられるが,簡便性,被曝,造影剤による副作用など欠点を有する.一方,造影超音波は簡便,安価であるとともに造影剤が赤血球と同じ動態を示し血管外への漏出がないため血管構造の描出に優れており,それを用いた脳,心臓,肝臓などの組織血流評価が報告されてきている.シクロオキシゲナーゼ(COX)-1関連のプロスタグランディン(PG)は,消化管粘膜維持,血小板癒着,腎血流,糸球体濾過値(GFR)などに関与し,COX-2関連PGは痛みや炎症,塩分と水の排泄などに関与することが知られている.NSAIDは腎障害をきたすことがあり,腎血流低下も一因であると考えられているが,その腎血流に対する影響を造影超音波により検討した報告は皆無に等しい.
【目的】
造影超音波を用いて,NSAIDの腎血流に及ぼす影響を評価した.
【方法】
対象:健常成人10名(男性5名,女性5名,26歳〜41歳,平均35±5.4歳).造影超音波:使用機器は東芝Aplio SSA790A,造影剤はSonazoidを0.5ml用いた.被験者は臥位となり,3.5MHzコンベックスプローブにより右腎の長軸を描出したのち低音圧(MI=0.2)amplitude modulationモードへ変換した.測定は一人の熟練医が担当し,造影剤静注から約2分間の画像を保存した.手順:昼食を絶食として午後に検査を行った.左前腕に点滴を挿入し約10分間臥位で安静にした後に,基礎値測定のため造影超音波を行った.その後,非選択的NSAIDであるジクロフェナクナトリウム(25mg)またはCOX-2選択的阻害薬であるエトドラク(200mg)1錠を内服し,血中濃度が最大となる時間,即ちジクロフェナクナトリウムの場合は60分後,エトドラクの場合は90分後に再度造影超音波を行った.解析:投与薬品の情報を知らない別の検者が,保存した動画を機器付属のアプリケーションを用いて画像解析した.腎皮質で葉間動脈,弓状動脈を除いた部位に関心領域(ROI)を設定して輝度変化曲線(TIC)を算出し,最大値を用いた.統計はWilcoxonの符号付順位検定により検討した.なお,本研究は当施設の倫理委員会の承認および被験者本人の同意を得て施行している.
【結果】
全例で副作用なく検査可能であった.ジクロフェナクナトリウム内服前,エトドラク内服前の最高輝度はそれぞれ26.0±17.4(平均±SD),26.5±19.7と有意差がなかった.ジクロフェナクナトリウム内服後には19.2±12.0と有意に減少していたが,エトドラク内服後は25.9±20.8と内服前後での差は認めなかった.
【考察】
全例で副作用なく腎血流測定の検討が可能であり,造影超音波は有用な腎血流測定方法であると考えられた.体格や条件により個人間に差はみられたため,個人間の比較は困難であるが,同一被験者の比較は可能であると考えられた.ジクロフェナクナトリウムでは腎血流低下がみられたが,エトドラクでは低下がみられなかった原因は,COX選択性の差による可能性が考えられた.クリアランス試験による検討においても,非選択的阻害薬であるインドメタシンおよびケトプロフェンは腎血流を低下させ,COX-2選択的阻害薬であるエトドラクでは低下がみられなかったとそれぞれ報告されており,今回の検討はそれらと同様の結果が得られた.
【結語】
非選択的阻害薬であるジクロフェナクナトリウムは腎血流を減少させるが,COX-2選択的阻害薬であるエトドラクはその副作用が少ないことが造影超音波により示された.