Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

奨励賞演題:体表

(S301)

多発性内分泌腫瘍症候群1型における副甲状腺過形成病変の超音波所見の検討

Ultrasonographic evaluation of parathyroid hyperplasia in multiple endocrine neoplasia type 1 patients

田宮 寛之1, 宮川 めぐみ1, 岩谷 胤生2, 鈴木 尚宜1, 竹下 章1, 3, 三浦 大周2, 3, 竹内 靖博1, 3

Hiroyuki TAMIYA1, Megumi MIYAKAWA1, Tsuguo IWATANI2, Hisanori SUZUKI1, Akira TAKESHITA1, 3, Daishu MIURA2, 3, Yasuhiro TAKEUCHI1, 3

1虎の門病院内分泌・代謝内科, 2虎の門病院乳腺・内分泌外科, 3虎の門病院冲中記念成人病研究所

1Division of Endocrinology, Toranomon Hospital, 2Division of Surgery, Endocrine Center, Toranomon Hospital, 3Okinaka Memorial Institute for Medical Research, Toranomon Hospital

キーワード :

【はじめに】
多発性内分泌腫瘍症候群1型(MEN1)における副甲状腺の超音波所見に関して,これまでまとまった報告は少ない.今回我々は10例のMEN症例での特徴を検討した.
【方法】
2006年1月より2010年12月までの間に当院でMEN1と確定診断され,手術を施行した10例を対象に,家族歴等の情報,超音波(US)所見,血液検査,手術所見,病理所見を解析した.
【結果】
対象患者は年齢34~62歳(平均47歳),男女比7:3.家族歴は6例で認められ,下垂体腫瘍合併は6例,膵島腫瘍合併は4例あった.血液検査では血清アルブミン補正カルシウム9.9~12.6(平均11.1)mg/dl,血清リン濃度1.5~2.8(平均2.5)mg/dl,インタクト副甲状腺ホルモン(iPTH)は96~464(平均177)pg/mlであった.副甲状腺の腫大はUS上全例で25腺確認できたが,1例あたりでは1~4(平均2.5)腺であり,術後病理では3~5腺(平均3.8腺,全て過形成)の存在が確認され,USでの検出率は66% (25/38)であった.US上7例で腺腫様甲状腺腫 (AG) を合併しており,AG非合併例では検出率が82%(9/11)であるのに対しAG合併例では59%(16/27)と低く,中にはAGの結節と考えられたが病理で機能性副甲状腺嚢胞(6500mg)と診断されたものも1例存在した(図1).逆に術前副甲状腺と思われたが病理上AGと診断されたのも1例認めた.重量は17~6500(平均598)mgとばらつきが大きく,各症例内でも最大腺と最小腺の重量比は1.8~25(平均9.4)倍と顕著なばらつきを認めた.総重量と年齢に相関は認められなかった(R2=0.22).超音波上検出された25腺の推定容積は14~5150(平均620)mm3であり,重量とは相関(R2=0.82)したが,分葉状,境界不明瞭な腫大腺では推定容積と重量が乖離する傾向にあった.術前血清iPTHの値と副甲状腺の総重量は良く相関(R2=0.94)し,USによる推定容積とも相関した(R2=0.92).US上サイズの大きいものは内部不均一,境界不明瞭,分葉状等非典型的所見を示す事が多かった.大きいものはUS上血流豊富なものが多く,境界不明瞭で甲状腺癌との鑑別が問題になった腫大腺も1腺存在した.
【考察】
MEN1ではAGを合併しやすく腫大腺の同定が困難になること,腫大腺のサイズはばらつきやすいことが示された. 更に,1例において認められた副甲状腺嚢胞はUS上AGとの鑑別が困難でMEN1においては極めて稀な症例であった.副甲状腺の腫大腺と甲状腺病変との鑑別が困難な場合には血清iPTHとUS上の副甲状腺の推定容積が良く相関するため,鑑別の参考になる可能性が示唆された.