Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

奨励賞演題:産婦人科

(S300)

出生体重SD値の妊娠中期超音波胎盤長径に対する基準値曲線について

Examination to suppose birth weight SD from placental size at 20-21weeks

早田 桂, 小松 玲奈, 関野 和, 香川 幸子, 依光 正枝, 舛本 明生, 石田 理, 野間 純, 吉田 信隆

Kei HAYATA, Reina KOMATSU, Madoka SEKINO, Yukiko KAGAWA, Masae YORIMITSU, Akio MASUMOTO, Makoto ISHIDA, Jun NOMA, Nobutaka YOSHIDA

広島市立広島市民病院産科婦人科

Departments of Obstetrics and Gynecology, Hiroshima City Hospital

キーワード :

【目的】
胎盤は妊娠の進行に伴い増大し,胎盤重量と胎児の大きさや出生体重は直線的に相関することが報告されている.この胎盤と出生体重の相関関係を周産期管理に用いるため,超音波での胎盤の大きさに着目した.そして妊娠中期超音波胎盤計測の基準値設定を行い,将来胎児発育不全(以下FGR)となる症例の抽出や,出生体重の推測に有用か否かを検討した.
【方法】
当院産科外来において,母体背景に関係なく,妊娠20週0日〜21週6日(平均21.1±0.4週・以下妊娠中期)の胎児超音波検査時に胎盤を計測し,その後正期産で分娩に至った単胎347例を対象とした.正期産, AFD児であった症例の計測データから,妊娠中期胎盤長径の基準値を作成した.さらに妊娠中期胎盤長径から推測される出生体重を,標準偏差(SD値)で評価した基準値曲線として,全症例の計測データを基に作成した.妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のように母体因子が原因と考えられる症例,胎児異常によるFGRと考えられる症例,および双胎妊娠は除外した.胎盤長径はBモード画像で胎盤最長径が測定可能な断面を描出し,絨毛膜板と基底板の中間を計測値とした.
【結果】
AFD 312例の妊娠中期平均胎盤長径は12.4±1.2cmとなり,この基準値を基に,LFD,HFD症例の妊娠中期胎盤長径を評価した.LFD18例の平均胎盤長径は10.6±0.5cmで,この数値は胎盤長径を標準偏差(SD値)で評価した場合-1.5SDに該当し, AFDに比し低値を示した (p<0.001).HFD17例の平均胎盤長径は13.8±0.8cmで,この数値は胎盤長径+1.1SDに該当した.またLFD 18例の胎盤長径は最長11.2cmであり,この数値は胎盤長径-1.0SDに該当した.胎盤長径11.2cm未満65例のうち, 27%がLFDとなり, 73%がAFDとなったが, 出生体重をSD値で評価した場合,出生時AFD症例でも出生体重SDは-1.4SD〜+0.5SD(平均-0.6SD,中央値-0.6SD)であり, AFD内でも発育制限傾向になることが示された.胎盤長径11.2cm以上では329例全例がAFDあるいはHFDとなった.さらに全症例の胎盤長径毎の平均出生体重SD値を算出し回帰曲線を作成すると,強い正の相関関係を示した(図)(R2=0.929).妊娠中期の胎盤長径計測は,将来FGRとなる症例の抽出のみではなく,予測困難と考えられていた数ヶ月先の出生体重を大まかながら推測可能とした.
【結語】
妊娠中期胎盤長径はFGRのスクリーニングや出生体重の推測に有用である.