伊藤 裕也¹, 廣岡 芳樹², 伊藤 彰浩¹, 川嶋 啓揮¹, 大野 栄三郎², 松原 浩¹, 中村 陽介², 平松 武¹, 後藤 秀実¹

Yuya ITOH¹, Yoshiki HIROOKA², Akihiro ITOH¹, Hiroki KAWASHIMA¹, Eizaburo OHNO², Hiroshi MATSUBARA¹, Yosuke NAKAMURA², Takeshi HIRAMATSU¹, Hidemi GOTO¹

¹名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学, ²名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部

¹Department of Gastroenterology, Nagoya University Graduate School of Medicine, ²Department of Endoscopy, Nagoya University Hospital

キーワード :

【背景】
Real-time tissue elastography^®（EG）は，超音波を用いて組織の弾性情報を画像化する機能である．肝炎・膵炎などの線維化診断における有用性が報告されているが，脂肪膵においても膵実質EG画像（組織弾性像）は不均一になる傾向が得られている．膵脂肪化の関連因子として年齢，動脈硬化，糖尿病，飲酒，肥満，脂肪肝が報告されているが，年齢，動脈硬化，糖尿病，飲酒は同時に膵線維化の関連因子でもある．脂肪膵では線維組織を混在する結果，細胞成分の不均一性が生じ，膵実質EG画像も不均一になると考えられる．
【目的】
脂肪膵における膵実質不均一性を検討すること．
【対象と方法】
対象は2009年1月〜2010年8月までに腹部超音波検査を実施し，膵疾患および大量飲酒歴（1日エタノール換算60g以上）のない連続46症例（平均年齢59.7歳，男女比19：27）をretrospectiveに検討した．Marksらの提唱（Radiology 1980）に基づき，B-mode画像で肝臓（または脾臓）より高輝度である膵臓を脂肪膵と定義し，高エコー群（脂肪膵群）と低〜等エコー群（Control群）に分類した．超音波観測装置はEUB-8500（日立メディコ社製）を使用し，膵体部膵実質に対してB-mode観察＋EG観察を施行した．EG画像定量化はストレインヒストグラム計測機能（日立メディコ社製）を用いた特徴量解析にて行った．EG画像をグレースケール変換（テクスチャ解析）し算出される9項目（Mean，Standard Deviation，ASM，Contrast，Correlation，Entropy，IDM，Skewness，Kurtosis），および二値化変換（ブロブ解析）し算出される3項目（Number of Centroid，Area%，Mean of Complexity），計12項目の特徴量を膵実質不均一性の定量化候補とした．検討項目を以下に示す．①膵実質エコー輝度と各種臨床所見（年齢，性別，動脈硬化，高脂血症，高血圧，糖尿病，飲酒，喫煙，BMI，脂肪肝）を比較検討し，脂肪膵と関連する臨床所見を選別すること．②膵実質エコー輝度と12項目の特徴量を比較検討し，脂肪膵に関連する特徴量を選別すること．
【結果と考察】
脂肪膵群20例，Control群26例の検討結果を以下に示す．①年齢，動脈硬化，高血圧，脂肪肝（p=0.024, p=0.01, p=0.011, p=0.01）が脂肪膵に関連する臨床所見であった．年齢，動脈硬化は膵線維化の関連因子でもあり，脂肪膵における膵線維化の存在が予想された．②脂肪膵と関連する特徴量としてContrast（グレースケール画像にて，近接する2点の差分値が大きい点が多いと高値，すなわち不均一なほど高値となる項目）とCorrelation（グレースケール画像において，深度方向に同じ値の点が多いと高値，すなわち均一なほど高値となる項目）が選択され，Contrastは有意に高値（1950±469 versus 1487±469，p=0.02），Correlationは有意に低値（0.906±0.026 versus 0.927±0.022，p=0.04）であった．両項目により脂肪膵がEG画像上不均一であることが定量的に示された．
【結論】
脂肪膵はEG画像上不均一であり，その背景には線維化の混在も予想される．