Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

奨励賞演題:消化器

(S296)

肝膿瘍に対するソナゾイドを用いた造影超音波検査の有用性

The availability of contrast-enhanced ultrasonography with Sonazoid to the liver abscess

木科 学, 孝田 雅彦, 藤瀬 幸, 加藤 順, 徳永 志保, 的野 智光, 永原 天和, 杉原 誉明, 村脇 義和

Manabu KISHINA, Masahiko KODA, Yuki FUJISE, Jun KATO, Shiho TOKUNAGA, Tomomitsu MATONO, Takakazu NAGAHARA, Takaaki SUGIHARA, Yoshikazu MURAWAKI

鳥取大学医学部附属病院機能病態内科学

Division of Medicine and Clinical Science, Tottori University School of Medicine

キーワード :

【目的】
肝膿瘍はしばしば敗血症を経てDICや多臓器不全へ至る重篤な疾患である.従って肝膿瘍の早期診断とともに膿瘍穿刺による起因菌の同定及びドレナージが重要である.しかし,通常のBモードでは膿瘍が不明瞭であったり,膿瘍腔が確認されない症例をしばしば経験する.ソナゾイドは第2世代の超音波検査用造影剤であり,肝腫瘍性病変の診断に多く用いられている.我々は先に肝膿瘍に対しソナゾイドを用いた造影超音波検査(CEUS)を施行し,膿瘍腔が明瞭に描出し得た症例を経験したので,今回症例を増やして肝膿瘍に対するCEUSの有用性を,膿瘍の存在診断,ドレナージ支援,経時的治療効果判定の面で検討した.
【対象・方法】
当院において2008年4月〜2010年12月に臨床的に肝膿瘍と診断し,ソナゾイドを用いたCEUSが施行された12例を対象とした.平均年齢70.3歳(29〜84)で男性10例,女性2例であった.起因菌は大腸菌2例(16.7%),クレブジエラ7例(58.3%),赤痢アメーバ1例(8.3%),不明2例(16.7%)であった.不明である2例のうち1例は膵癌に合併した肝膿瘍,もう1例はRFA後肝膿瘍であった.合併症として癌5例(肝細胞癌3例,膵癌肝転移1例,肝門部胆管癌1例)(41.7%),胆道系疾患3例(術後胆管狭窄1例,総胆管結石1例,肝門部胆管癌1例)(25.0%),大腸ポリープ2例(16.7%),糖尿病1例(8.3%)を認めた.使用した超音波装置は東芝メディカルシステムズ社製のAPLIO XGで,使用プローブは3.5MHzコンベックスで,ソナゾイド投与量は0.5ml(0.0075μl/kg),MI値は0.17〜0.25とした.ソナゾイド投与後よりリアルタイムに血管相を観察した後,ソナゾイド投与後約10分後にKupffer相を観察した.また12例中7例で治療効果をCEUSにて経時的に観察した.
【結果】
Bモードでは12例全例で病変の描出は可能なものの不明瞭であった.CEUSでは12例中11例において血管相で膿瘍辺縁が濃染した.Kupffer相で膿瘍の内部は12例中6例で均一なdefect,3例で内部に高エコー領域を伴うdefect,2例で蜂巣様,1例で高エコー領域として描出された.血管相で膿瘍辺縁の濃染を認めなかった症例と,Kupffer相で膿瘍腔の内部が高エコー領域として認めた症例は同一症例で,膿瘍腔内への出血が疑われた症例であった.12例全例で,肝膿瘍の診断が可能であった.12例中11例でCEUS下に膿瘍穿刺を行い10例で膿汁採取が可能であった.12例中7例で経時的にCEUSを行い,うち5例で膿瘍腔の縮小,消失を確認できた.膿瘍腔の縮小を確認できなかった2例中1例については右葉後区域に形成された膿瘍であり,排膿後描出が困難となった.もう1例は膿瘍穿刺後10日後にCEUS施行したが,膿瘍腔のサイズは不変であった多発肝膿瘍例であった.
【考察】
肝膿瘍の診断,治療評価には,従来から造影CTが有用とされてきたが,今回ソナゾイドによるCEUSは,CTとほぼ同等の検出能であった.腎機能障害のため造影CTが不可能な患者,被爆,コストの点や,すぐにドレナージが可能である点でCTに比べて優位である.またBモードと比べて膿瘍腔をより明瞭に描出することによって穿刺が容易となり,治療効果の経時評価にも優れている.
【結語】
ソナゾイドを用いたCEUSは肝膿瘍の診断,ドレナージ支援,治療評価という点において有用である.