Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

奨励賞演題:消化器

(S295)

カラードプラー,造影エコー(ソナゾイド)による肝生検後出血の評価

Detection of post biopsy bleeding by color Doppler ultrasound sign and contrast-enhanced ultrasound with Sonazoid

徳永 志保, 孝田 雅彦, 加藤 順, 木科 学, 藤瀬 幸, 的野 智光, 杉原 誉明, 永原 天和, 村脇 義和

Shiho TOKUNAGA, Masahiko KODA, Jun KATO, Manabu KISHINA, Yuki FUJISE, Tomomitu MATONO, Takaaki SUGIHARA, Takakazu NAGAHARA, Yoshikazu MURAWAKI

鳥取大学医学部附属病院機能病態内科学

Division of Medicine and Clinical Science, Tottori University School of Medicine

キーワード :

【目的】
経皮的肝生検で最も重篤な偶発症は生検後の出血であり,死亡例の大部分が出血によると報告されている(Gut 1999;45(Ⅳ):S1-11).したがって肝生検後の出血の早期発見は適切な止血処置を行うための第一歩となる.カラードプラー(CDUS)は血流を高感度に検出することが可能であり,肝生検後出血や動静脈瘻診断に有用であるとされている.一方ソナゾイドによる造影エコー(CEUS)はリアルタイムに血流を描出することが可能であり,先に我々は肝生検後の出血の診断に有用であった1例を報告している( J Ultrasound Med.2010;37:143).今回我々は肝生検後CDUSとCEUSでの穿刺経路の血流検出率を検討した.
【対象】
2008年6月から2010年12月に当院で肝生検を施行した70例を対象とした.平均年齢54.3歳,男:女=33:37,疾患は急性肝炎7例,慢性肝炎37例,肝硬変1例,非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)23例,その他2例,病因はB型4例,C型29例,薬物性肝障害3例,自己免疫性肝疾患7例であった.
【方法】
超音波装置はAplioXG(東芝,3.5MHzプローブ)を使用した.肝生検にはマジマニードル17G(株式会社トップ)を用いた.まず,CDUSで血管の分布を観察し,血管を避けるように穿刺経路を選択した.Bモード下に肝生検を施行し,肝生検直後から約30秒CDUSで穿刺経路,および肝表面を観察した.穿刺経路にカラー表示を認めないものcolor flaw(-),カラー表示を認めるものcolor flaw(+)とした.その後ソナゾイド0.5ml/bodyを投与し,穿刺経路,および肝表面を観察した.撮影条件はHarmonic Imaging,MI:0.15-0.25,Focus:4-8cmとした.穿刺経路に造影剤の流出がないもの:grade 0,造影剤の流出が認められたものgrade 1,肝表面あるいは腹腔内に造影剤の流出が認められるもの:grade 2とした.肝生検から3,5分後にFlash replenishment imagingにて穿刺経路の造影剤流出の有無を確認し,認められる場合には,2分毎に再検した.造影剤が不十分な場合は追加した.
【成績】
CDUSでの評価はcolor flaw(-):36例,color flaw(+):34例であった.CEUSでの評価はgrade 0:44例,grade 1:25例,grade 2:1例であった.CDUSでcolor flaw(+) 34例のうち,CEUSでgrade 0が11例あった.又,CDUSでcolor flaw(-) 36例のうち3例でCEUS grade 1であった.肝脂肪沈着がCDUS及びCEUSの出血検出感度に影響しないか,慢性肝炎とNAFLDで比較した.CDUSのcolor flaw(-):(+)は慢性肝炎で16:17,NAFLDで14:9,CEUSのgrade 0:1は慢性肝炎で20:13,NAFLDで16:7といずれも有意差を認めなかった.CEUSでgrade 1,grade 2であった26例で経時的に観察すると,3分で15例は造影剤の流出が消失し,5分で10例が消失,7分で1例が消失した.1例でモリソン窩に少量のecho free spaceを認めたが,明らかな貧血は認めなかった.
【結語】
CDUS,CEUSによって肝生検後の出血の評価が可能であった.color flawあるいは造影剤の流出を認めた症例ではCEUSで経時的に観察することにより,確実に出血状況を把握できることを確認した.