中村 陽介¹, 廣岡 芳樹¹, 伊藤 彰浩², 川嶋 啓揮², 大野 栄三郎¹, 松原 浩², 伊藤 裕也², 平松 武², 後藤 秀実^{1, 2}

Yosuke NAKAMURA¹, Yoshiki HIROOKA¹, Akihiro ITOH², Hiroki KAWASHIMA², Eizaburo OHNO¹, Hiroshi MATSUBARA², Yuya ITOH², Takeshi HIRAMATSU², Hidemi GOTO^{1, 2}

¹名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部, ²名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科

¹Department of Endoscopy, Nagoya University Hospital, ²Department of Gastroenterology, Nagoya University Graduate School of Medicine

キーワード :

【目的】
Solid-pseudopapillary neoplasm（SPN）の超音波内視鏡検査（EUS）所見は，膵内分泌腫瘍（PET）との共通点が多く，時にその鑑別が困難となる．今回，PET とSPNの鑑別におけるEUS所見につき検討した．
【対象】
2001年1月から2010年12月までに当院で術前にEUSを施行し，外科的切除により病理組織学的診断を得たPET42例とSPN6例．内訳はPET：男性21例，女性21例，平均年齢52.8±13.1歳，平均腫瘍径24.5±24.4mm．SPN：男性3例，女性3例，平均年齢42.3±6.1歳，平均腫瘍径29.3±5.6mm．
【方法】
超音波内視鏡および観測装置は，Pentax社製EG-3630UR/EG-3670URKと日立メディコ社製EUB-8500/HV900，またはOlympus社製GF-UE260とAloka社製Prosound α-10を使用した．B-modeで病変を観察後に，経静脈的に超音波造影剤を投与し，Color Doppler mode（CD-mode）にてその血行動態を評価した．なお超音波造影剤は，2006年12月まではレボビスト^®（バイエル）を，それ以降はソナゾイド^®（第一三共）を使用した． なおソナゾイド^®の適応外使用については，当院IRBの承認を得ており，十分なinformed consentのもとで実施している．
以下につき検討した．1）Plain EUS：B-mode画像所見の特徴を検討し，病理組織学的所見と対比した．2）Contrast-enhanced EUS：超音波造影剤投与後にCD-modeで病変を観察し，両者の造影動態を比較した．
【結果】
1） PETは42例中38例（90%）で境界明瞭な低エコー腫瘤として描出され，側方陰影を20例（48%）に認め，そのうち18例では病理学組織的に被膜形成を確認した．また出血，壊死を反映する嚢胞形成を9例（21%）に認め，それらの平均腫瘍径は32.0±5.2mmであった． SPNは全例，境界明瞭な低エコー腫瘤として描出され，側方陰影を4例（66%）に認め，その全てで病理学組織的に被膜形成を確認した．また腫瘍径30mm以上の3病変（50%）で内部に無エコー領域を認め，病理組織学的に出血，壊死による嚢胞変性に一致した．2） PETは42例中40例（95%）でびまん性均一な血流シグナルを認め，多血性の造影動態を示した．残りの2例は乏血性の血行動態を示したが，いずれもuncertain behavior（WHO classification 2004）以上の悪性度の高い病変であった．SPNは全例で斑状不均一な血流シグナルを認め， PET典型例と比較して乏血性であった．
【結論】
造影EUSにおけるCD-modeでの観察は， PET とSPNの鑑別診断に有用である可能性が示された．