Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

奨励賞演題:循環器

(S294)

軽度圧負荷による虚血メモリーの増強と潜在的な壁運動異常の検出

Prolongation of Myocardial Ischemic Memory and Detection of Concealed Wall Motion Abnormality with Mild Afterload Augmentation

増田 佳純, 浅沼 俊彦, 岩崎 真梨子, 日置 彩那, 中谷 敏

Kasumi MASUDA, Toshihiko ASANUMA, Mariko IWASAKI, Ayana HIOKI, Satoshi NAKATANI

大阪大学大学院医学系研究科機能診断科学講座

Division of Functional Diagnostics, Osaka University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
Post-systolic shortening (PSS)は心筋虚血の鋭敏な指標であり,虚血改善後もしばらく残存する(虚血メモリー).PSSの大きさは後負荷増大により増加するが,その残存時間に対する後負荷の影響,さらに一旦消失したPSSが後負荷増大によって再出現するかどうかについては知られていない.もし消失したPSSを後負荷変動により再検出できるなら,臨床上有用である.
【目的】
1)短時間虚血再灌流後のPSSの残存に対する軽度圧負荷の影響と,2)壁運動異常が回復した後,軽度圧負荷によりPSSなどの異常が再出現するかを検討する.
【方法】
1)麻酔開胸犬を用い,左回旋枝(LCx)を4分間閉塞後,再灌流した.閉塞前よりフェニレフリン(PE) 1.0 g/kg/minを投与した群(8頭)と投与しなかったcontrol群(7頭)において,経時的に左室短軸像を取得し,スペックルトラッキング法にて,虚血・非虚血領域の収縮期最大ストレイン(εsys),ストレインレート(SRsys),PSSの指標であるpost-systolic index (PSI),等容性拡張期後半の最大ストレインレート(SRIVR)を解析した.2)麻酔開胸犬7頭を対象とし,LCx4分閉塞後,60分再灌流し,壁運動回復を確認後,軽度圧負荷を行った.圧負荷前後で,1)と同様の指標を解析した.
【結果】
1)左室収縮期圧はPE群で有意に上昇した(113±13 [control] vs. 140±18 [PE] mmHg, p<0.05 ).虚血領域のεsys,SRsysは両群で閉塞時に低下したが,再灌流後速やかに回復した.一方,PSI,SRIVRはcontrol群では,閉塞前と比べ,再灌流約30分間高値を示しその後回復したが,PE群では再灌流後60分においても高値を示した(図).2)圧負荷により虚血領域のεsys,SRsysは変化しなかったが,PSI,SRIVRは有意に増加した(PSI: 再灌流後; 0.03±0.04, 負荷時; 0.13±0.10, p<0.05, SRIVR: 再灌流後; 0.17±0.12, 負荷時; 0.53±0.31, p<0.05).
【結語】
軽度圧負荷時,PSSの残存時間は延長した.また,壁運動異常が回復した後でも,軽度圧負荷によりPSSは再出現し,このような圧負荷は虚血メモリーイメージングに有用であることが示唆された.