Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

奨励賞演題:基礎

(S292)

反射体を有する生体ファントムの超音波照射による内部温度分布の熱画像観測

Observation by thermal imagery of the inside temperature distribution by ultrasonic irradiation of phantom that possess reflector

田中 伸, 佐久間 優, 新川 竜大, 廣瀬 和紀, 猪股 秀昭, 土屋 健伸, 遠藤 信行

Shin TANAKA, Suguru SAKUMA, Ryuta NIIKAWA, Kazuki HIROSE, Hideaki INOMATA, Takenobu TSUCHIYA, Nobuyuki ENDOH

神奈川大学工学部電気電子情報工学専攻

Department of Electrical, Electronics and Information Engineering, Kanagawa University

キーワード :

【背景・目的】
非侵襲的温度観測法としてサーモトレーサを用いた温度計測法があり,観測対象の空間的温度分布を簡単にリアルタイムで観測を行える.本報告では超音波照射による生体ファントムの温度上昇実験を行い,反射体がある場合と無い場合でのファントム内部の温度分布の変化をサーモトレーサにて熱画像観測し比較した.
【方法】
使用する生体ファントムは直径36 mm,高さ60 mmの円柱形でJIS T0601-2-37に記載されている生体軟部組織模擬材の質量分率表に基づき作成した.熱的・音響的パラメータを測定した(Table.1)ファントムを長さ方向に対し半分に切断し,さらに断面にジェルを塗り,元の円筒に戻す.ファントムの上面に送波器(3.5MHz,有効径=20 mm)を密着させ,超音波を強度ISPTP=1.5[W/cm2],連続超音波で10分間照射し,その後ファントムの断面が見えるように開き,断面の温度分布をサーモトレーサ(NEC三栄製TH5104)で観測した.この時ファントムの下部に吸音材(ポリウレタン)もしくは反射体(アクリル)を敷きそれぞれの温度分布を比較する.サーモトレーサはファントムから300 mm 離れた位置に設置する.同装置の説明書よりこの時のサーモトレーサの測定視野は137×137 mm,最小検知寸法は0.894×0.894 mm である.システムのブロック図をFig.1に示す.
【観測結果・まとめ】
周波数3.5 MHzの連続超音波を10分照射した場合には,吸音材もしくは反射体を敷いたいずれの場合もファントムと反射体との境界で温度上昇がなかった.境界での反射波に起因する温度上昇の確認のためファントムの長さを半分(30 mm)にして同様の観測を行ったが,この場合でも反射波による温度上昇は見られなかった.そこで,長さ30 mmのまま送波周波数1 MHz(有効径=25 mm)に変更し,超音波強度ISPTP=1.5 [W/cm2]で照射し観測を行ったところ境界付近での反射による温度上昇が見られた(Fig.2).ファントム長が30 mmで送波周波数を変えた時のファントムの中心軸上の温度分布のグラフをFig.3に示す.今後はファントムのパラメータや形状,照射時間等を変更して超音波照射による温度分布の観測を熱画像法にて引き続き行う予定である.