Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

奨励賞演題:基礎

(S291)

SADMAPによる超音波造影画像の高精度位置補正処理

Accurate Motion Compensation Method of Ultrasonic Contrast images using SADMAP Index

吉川 秀樹, 東 隆, 川畑 健一

Hideki YOSHIKAWA, Takashi AZUMA, Ken-ichi KAWABATA

日立製作所 中央研究所ライフサイエンス研究センタ

Life Science Laboratory, Hitachi.Ltd., Central Research Laboratory

キーワード :

【背景】
 造影超音波分野において,通常では動画観察で得られる時系列情報を単一画像に集約し,血管網や血流動態を客観的な形で可視化する時系列画像処理が注目されている.しかしながら,1.造影前後での輝度分布の変化,2.組織の変形,3.撮像面から外れる移動,等に起因する着目対象の位置ずれの問題により,現状での適用は限られたものになっている.例えば画素毎の最大輝度を保持するpeak-hold法により血管網を描出する場合,実行的な時間レンジは数秒に及び,画像の滲みや虚像が顕著に表れる.本報告では,補正過程で得られるSADMAPの形状パラメータを精度指標として導入し,時系列画像処理に有効な画像のみを選択的に抽出することを特長とする位置補正処理を提案し,精度,汎用性,効果を検証する.
【目的】
 造影画像を用いた時系列画像処理の高精度化を実現するために,上記課題を解決する位置補正処理を提案する.特に補正結果の信頼性を示す精度指標を導入し,面外移動の影響を効果的に抑制する方式に関して検討を行なう.
【実験】
 提案の位置補正処理は差分絶対値(SAD値)に基づく.この方式では補正の基準となる画像上にROIを設置し,補正対象の画像上からSAD値の総和が最小となる領域を探索する.通常はSAD値が補正の信頼性を示すが,造影画像では造影剤の流入に伴う輝度変化が大きいため,精度指標に適さない.そこで本方式では,探索過程で得られる全てのSAD値を利用してSADMAPを構成し,その形状パラメータを精度指標として導入した.
【結果】
 うさぎ腫瘍の造影画像に時系列処理を適用して得られた血管網の画像,および精度指標の推移を図に示す.精度指標に基づく位置補正処理を適用した画像では,血管網が滲みや虚像なく鮮明に描出できている.また画像データ後半部に含まれる面外移動を他の画像と高感度に区別でき,精度指標の有効性を確認できた.
【結論】
 補正の信頼性を客観的に示す精度指標を導入した位置補正処理を提案し,高精度な時系列画像処理を実現した.特に面外移動の影響を効果的に抑制するため,制約条件が低い汎用性な技術として期待できる.発表では精度指標の導出方法を始めとする位置補正処理の全体工程に関する詳細を説明し,更に時系列処理によって得られる様々な画像形態に対して本方式の位置補正処理を適用した結果を報告する.