Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画33 整形外科:「まずレントゲン」ですか?〜骨折と軟部組織損傷の超音波画像診断〜

(S281)

整形外科領域における体外衝撃波治療

Extracorporeal Shock Wave Therapy in Orthopedics.

高橋 謙二, 土屋 明弘

Kenji TAKAHASHI, Akihiro TSUCHIYA

船橋整形外科病院スポーツ医学センター膝関節外科

Knee & Lower Extremity Service, Funabashi Orthopaedic Hospital Sports Medicine Center

キーワード :

【目的】
体外衝撃波治療(以下,ESWT)は尿路結石の破砕装置として広く普及しているが,整形外科用としては2008年に慢性足底腱膜炎の治療機器として本邦で初めて認可された.本治療は,1980年代後半よりドイツにて偽関節治療に応用されたのが最初で以後,難治性腱付着部症の除痛治療に応用され,石灰沈着性腱板炎,上腕骨外上顆炎,足底筋膜炎などに対する有効性が報告がされてきた.今回,本治療の適応,治療方法について紹介すると共に,当院での足底筋膜炎に対する治療成績を中心に報告する.
【体外衝撃波治療】
本邦で認可された機種はEPOS ULTRA(Dornier Med Tech, 独)である.衝撃波発生装置は電磁誘導方式で超音波ガイド下に病変部に照射することが可能である.照射出力はエネルギー流速密度(Energy Flux Density; EFD (mJ/mm2))で表され7段階(0.03〜0.36mJ/mm2)の設定が可能でlow 〜high energyの照射ができる.治療方法は原則,無麻酔下に痛みに耐えられる最大出力で5000発,治療回数は1〜2週毎に計3回としているが,症状が残り患者の希望次第で更に追加照射を行っている.
【対象と方法】
対象は2008年11月〜2010年8月までに当院にてESWTを施行し,経過観察しえた足底筋膜炎28例32足である.検討項目として,治療成績,朝一歩目と運動時のVASによる疼痛評価,合併症の有無について調査した.
【結果】
本治療の効果が優または良であった有効例は32足中25足(78.1%)であった.VASの経過は,朝一歩目の疼痛は治療前後で45.6±23.6mm→22.3±20.4mmに,運動時(歩行時)の疼痛は64.5±18.6mm→30.1±23.8mmに改善した.本治療において重大な合併症は認められなかった.
【考察】
衝撃波は音速を超えて伝わる圧力波で,超音波と同様な音響特性を有し水と同等のインピーダンス内を伝わる.しかし衝撃波の特性としてインピーダンスの異なる境界ではエネルギーを放出するため,生体内では筋肉,脂肪などは通過し骨や肺において作用する.このように物理的な組織破壊作用の他に,細胞への至適な刺激により血管新生,腱再生など組織修復機転の促進や自由神経終末の破壊,神経伝達物質の伝導抑制などの除痛作用を有すると考えられている.ESWTの臨床的な有効性について,特に足底筋膜炎に対する多くのRandomized Clinical TestやMeta-Analysisが報告されており有効であると結論づける報告は多い.当院における治療経験でも足底筋膜炎に対するESWTの効果は良好であり,重大な合併症はみられないことより手術療法の前に選択されるべき治療法である.
【結論】
体外衝撃波治療は足底筋膜炎をはじめ多くの腱付着部症の除痛治療や偽関節治療に適応があり今後の整形外科領域の発展・普及に期待される.