Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画33 整形外科:「まずレントゲン」ですか?〜骨折と軟部組織損傷の超音波画像診断〜

(S279)

整形外科医における超音波の位置づけ

Ultrasonography for Orthopedic Surgeons

鈴江 直人, 安井 夏生

Naoto SUZUE, Natsuo YASUI

徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部運動機能外科学

Department of Orthopedics, The University of Tokushima Graduate School

キーワード :

【はじめに】
われわれ整形外科医にとって,画像診断のfirst choiceは長年,X線検査(いわゆる「レントゲン」)であった.いかなる疾患であろうが,とにかく「まずはレントゲン」を行ってきた.しかし近年,その牙城を脅かす存在が出現してきた.それが超音波エコーである.
【超音波エコーのメリット・デメリット】
整形外科が扱う運動器に対して超音波エコーが有用であることは疑いがない.そのメリットとしては①侵襲がないこと,②安価であること,③繰り返し検査できること,④血流がわかること,⑤動きがみえること,などが挙げられる.特に動きを観察できるメリットは大きく,他の画像検査では代替が困難である.しかしながら今日まで,多くの整形外科医が超音波エコーを用いなかった理由は,運動器に対しての走査方法が十分に確立されていなかったためであると思われる.運動器は体表から比較的浅い部分にあり,その観察には高周波プローブが適している.しかし以前の機種で描出される画像はお世辞にも分かりやすいとは言い難く,系統立てた走査,観察を行うことは困難だったと推測される.この点において近年の技術革新の恩恵は大きく,今や機種によってはMRIを凌ぐ分解能を有するものも存在するようになった.さらにもう1つのメリットは,ポータブルタイプの機種であれば,スポーツの現場などですぐに検査が行える点である.負傷した選手に対して医療機関を受診する前に診断をつけることができるため,初期治療を誤るリスクが減少すると考えられる.一方,デメリットとして考えられるのは①描出される範囲が狭いこと,②骨の中までビームが届かないことなどである.また人によっては,自分自身でプローブを当てて検査を行うことが面倒と感じる場合もあると思われる.われわれ整形外科医は画像検査を検査技師に依頼して,出された画像を読影するというパターンに慣れ親しんできた.しかし超音波エコーは器械を自分自身で操作することが多くなるため,特に外来の忙しい中では抵抗を感じることもあるだろう.ただ,これについては自分で「しなければならない」ではなく,自分で「(自由に)できる」とポジティブに捉えたい.
【当院での使用】
当院では整形外科外来に1台,高周波プローブを備えた機種を設置している.患者が受診すればまず診察を行い,骨傷が疑われればX線検査を,軟部組織損傷ならば超音波エコーをfirst choiceとしている.さらに骨傷でも周囲の軟部組織の合併損傷や出血の拡がりを確認する上で,超音波エコー検査を追加している.複数の医師で共用していることもあり,必ずしも全員にその場で検査ができる環境ではないが,特に軟部組織損傷に対して超音波エコーを行った際の患者満足度は高い.また自分自身,今までみえていなかった部分への理解が深まり,レベルアップにつながっていると感じる.
【今後の位置づけ】
現時点では足踏みしている整形外科医は多いが,今後走査方法が確立されてくれば,そのメリットからX線検査と並んで画像検査のfirst choiceに十分なり得るであろう.