Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画32 産婦人科:産婦人科領域における超音波治療

(S277)

胎児外科をめざした強力集束型超音波(HIFU)

High Intensity Focused Ultrasound (HIFU) aimed for Utero Fetal Surgery

望月 剛1, 木原 泰三1, 梅村 晋一郎2, 北角 権太郎3, 千葉 敏雄4

Takashi MOCHIZUKI1, Taizo KIHARA1, Shin-ichiro UMEMURA2, Gontaro KITAZUMI3, Toshio CHIBA4

1アロカ株式会社研究所, 2東北大学大学院工学研究科, 3株式会社イノベンチャー・シー技術本部, 4国立成育医療研究センター臨床研究センター

1Research Laboratory, Aloka Co.,Ltd, 2Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, 3Technical Developments Division, Innoventure-c Co.,Ltd., 4Clinical Research Center, National Center for Child Health and Development

キーワード :

【目的】
超音波診断技術が飛躍的に進み,これによる出生前診断が確実に行えるようになって来た.このような状況で胎児子宮内治療の適用可能症例が多く報告されてきている.この子宮内胎児治療を安全にかつ母子ともに低侵襲に行える方法として,強力集束型超音波(HIFU)の応用について研究開発がなされている.ここでは今までの研究例と最新情報として,我々が行っている研究の一部である2つの研究を報告する.
【対象と方法】
ここでは胎児左室低形成症候群(HLHS)と胎児仙尾部奇形腫の治療を対象とする.HLHS治療法の一つとして,バルーンカテーテルを,母体腹壁を貫通し胎児心にまで到達させたのち,先端のバルーンにより心房中隔を穿孔する方法がある.この方法は極めて侵襲が大きい.そこでこのカテーテルの変わりに,母体体表からHIFUにより穿孔を行う研究を紹介する.もう一つの例は胎児仙尾部にできた腫瘍の栄養血管をHIFUにより閉塞させて治療をする方法を紹介する.
【技術課題】
HLHS治療の場合には,毎分200近い心拍で拍動する全長2cm程度の小さな心臓に向けて母体体表から超音波を発射し,的確な位置に2mm程度の孔を開ける技術が要求される.このために胎児心拍に同期したHIFU予測照射技術を開発した.また,母体表面からターゲットである胎児心までの距離を15cmとし,その深さでHIFUの焦点を結ぶHIFU振動子を開発した.仙尾部奇形腫治療では,胎児が羊水内で移動することが予想される.そこで胎児の動きを3D超音波で監視し,ターゲットである栄養血管の位置を逐次検出しながら,移動するターゲットに合わせてHIFU焦点を電子制御により移動するシステムを開発する.
【結果】
ウサギを用いた実験では心臓に同期し25ミリ秒以内で予測照射が行えることを確認した.ウサギの膀胱への照射では穿孔が可能であった.拍動下のウサギ心臓に対して4cmの近距離では穿孔が可能であったが,15cmの遠方からHIFUにより穿孔する実験では現在のところ成功に至っていない.仙尾部奇形腫治療装置では,現在,128チャンネルHIFU用アレイ振動子を製作し,その駆動装置を開発中である.動物実験は今後の予定である.
【結語】
目的に応じた最適なHIFU条件を確立することが治療を成功させる上で必須である.胎児治療では胎児が羊水の中にいるため超音波が良く伝播することや,母体の表面からでも音響窓が大きいなど他領域での超音波応用よりも有利な点があるが,胎児という最も脆弱な組織を治療するためにより高度な技術が要求されている.今後さらに安全に確実なHIFU治療をめざし,研究開発を進めて行く所存である.